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2023.07.15 08:00

小社会 炎の雨

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 一筋の光が上空ではじけ、無数の炎となって雨のように地上に降り注ぐ。その刹那(せつな)、大きな爆発音とともに辺り一帯が吹き飛び、土煙にのみ込まれる。これでは身を守るすべもあるまい。

 1発の親爆弾から多数の子爆弾をまき散らすクラスター(集束)弾の映像は、一瞬で全てを奪い去る理不尽さに満ちていた。恐ろしさは直接の破壊力だけではない。戦後もなお、長期にわたり犠牲を強い続ける。

 戦闘で使われなかった2021年さえ不発弾による死傷者が世界で149人に上った。そのほとんどは民間人。子どもも多く、中にはおもちゃと間違えて拾い、巻き込まれた幼児も。そんな無差別兵器を禁じるオスロ条約の採択は08年だった。

 非政府組織(NGO)の地道な被害者支援や不発弾の処理が後押しとなり「市民社会主導型」の軍縮条約といわれた。ただ、軍事的効果を重視する保有国の米中ロやウクライナなどは加わらず、悲劇は続く。

 ロシアはウクライナ侵攻でクラスター弾を多用し、対抗する形で米国がウクライナに供与した。市民の願いもむなしく、大国のエゴがまかり通る。この構図は核軍縮にも通じる。非人道性のレベルが上がり、また市民が犠牲となろう。

 日本では梅雨が明ければ鎮魂の季節がやってくる。一方、戦闘が続くかの地では炎の雨がいつ、どこで、どれだけ降るかも分からない。人々はいま、どんな気持ちで空を見上げていることか。

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