2023.06.30 08:00
小社会 コロナ禍明けの夏
輪抜けさまは厄よけだけではない。浴衣姿での夜店巡りを楽しみにする人もいるのでは。高知の夏まつりシーズン到来を告げる。あすからは帯屋町で土曜夜市。鳴子踊りの練習の音も響き始めた。
コロナ禍に泣かされてきた夏の催事だが、昨年から徐々に復活し、いよいよ解禁ムード全開である。「4年ぶり(の開催)」との表現もよく見かける。中断の鬱憤(うっぷん)を晴らすべく、再開に意欲を燃やす例も少なくあるまい。
その中、いの町の「氷室まつり」の再開断念が報じられた。土佐藩主に氷を献上した伝承を再現する旧本川村の名物行事。地域の高齢化で運営が難しくなっており、コロナ中断が引き金になったという。
地元支局にいて取材経験がある筆者は、往時のにぎわいを思い出す。住民のコメントに目を引かれた。役場からの支援の提案に「役場に頼ると住民主体とは言えん」。そこに地域の矜持(きょうじ)をみる。だからこそ一層、再開断念が惜しまれる。
コロナの波で潮時を迎え、静かに姿を消していく。そんな例はほかにもあるのだろう。収束の夏。見えないものにも目を凝らしていかねば。