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2023.06.28 08:00

小社会 マルバマンネングサ

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 マルバマンネングサ。梅雨の時期に黄色の星の形をした花を咲かせ、丸い常緑のぷにぷにした葉が艶やかに輝く。降雨もその植物の魅力を引き立てる。

 若き牧野富太郎博士は佐川でこれを採集した。やがてその標本は遠くロシアまで送られる。日本から届いた膨大な植物標本の一つ一つをロシアの植物学者は丁寧に鑑定した。その中にマルバマンネングサもあった。

 見たのはマキシモヴィッチである。日本を含む極東アジアにおける植物の権威として知られていた。その彼が、この植物を同定することができなかった。名前が分からなかったのだ。彼は「新種」であると断定した。

 そしてマキシモヴィッチからの手紙が牧野青年に届いた。何ということだろう。青年は歓喜した。佐川で見つけた身近な植物が新種と認められたばかりか、自分の名前が学名に込められていた。マキシモヴィッチは日本でマルバマンネングサなどと呼ばれていた植物に「セドゥム・マキノイ」という世界共通の学名を付けていた。

 この標本は1999年に県立牧野植物園で開かれた企画展「牧野富太郎とマキシモヴィッチ」で展示された。110年ぶりの里帰りであった。そして今も佐川のマルバマンネングサの標本は戦時のロシアにある。

 NHK朝ドラ「らんまん」で万太郎の祖母タキは言う。佐川を出て早く東京に帰りなさいと。〈草の道が海の向こうにもつながっちゅうがじゃろう〉

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