2024年 05月15日(水)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2023.06.15 08:00

小社会 お伽(とぎ)話

SHARE

 「鉄腕アトム」の生みの親、手塚治虫は、現実のロボットには、どんな未来を想像していたのだろうか。いまとなっては尋ねようもないが、古いエッセーにこんな言葉を見つけた。

 「アトムのような純機械人間が活躍するのは、ぼくは二十世紀的なお伽(とぎ)話として扱ってよいと思う」(週刊読売 1970年4月24日号)。いくら科学が進歩しても、ロボットが人間のような感情や本能を身に付けるのは難しいと見ていた。

 医学博士でもあった手塚らしく、現実の科学には冷静な目を持っていた。実際、50年以上たったいまも、感情を持つといえるロボットは誕生していない。

 もっとも、手塚は「二十世紀的なお伽話」と表現している。いまは21世紀。人型かどうかは別にして、ロボットの進化には目を見張る。産業ロボットが繊細な作業を超高速でこなし、話題の人工知能(AI)も頭脳版高性能ロボットといっていい。

 AIを活用し、手塚のもう一つの名作「ブラック・ジャック」の新作漫画を描く計画が発表された。AIはあくまで人間のサポート役らしいが、現在の劇的な進化がなければ、想像もできなかった事業だ。

 手塚はアトムをお伽話とした一方で、同じエッセーで、人間とロボットの立場逆転の恐れについて触れている。いずれ人間が「コンピューターに管理される奴隷のような存在になるかも」と。もちろん、こちらは21世紀的なお伽話であってほしい。

高知のニュース 小社会

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月