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2023.06.14 08:00

小社会 貨幣に服従しない

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 どうにも居心地悪い言葉に「新しい資本主義」がある。新しい経済思想が必要とされているのは分かるが、何かむずむずとした気持ちがする。

 斎藤幸平さん著「人新世の『資本論』」、白井聡さん著「マルクス―生を呑み込む資本主義」といった論考は、資本主義そのものからの転換を訴えるものである。そのためには資本主義の本質を知らなければならない、と。

 このまま資本が止めどない増殖を続ければ、自然資源は徹底的に収奪されて枯渇する。何より市場原理だけの経済的競争は、人間の心身を荒廃させる。

 それら著書の土台にあるのはマルクスの思想である。主著「資本論」は「商品」の分析から始まる。私たちが直面しているのは、あらゆるものが商品となった世界のひずみだ。商品とは貨幣と交換するためのもの。貨幣と交換できないものは商品ではない。新しいイデオロギーに必要なことは「商品=貨幣」が「神」とならないようにすることだろう。

 私たちが住んでいる高知もまた資本主義から逃れられない。ただ、先に挙げた本の著者たちは都市の風景と論理の中にいるが、高知の人々はいくぶん異なる自然風景の中に住んでいる。貨幣を介さない交換や贈与や無償の文化も、まだまだ残っている。

 釣り過ぎたアジを配る。返礼は家庭菜園の大根だ。時には会社も休み街で踊ろう。貨幣に完全には服従しない私たちの暮らしがある。

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