2024年 05月20日(月)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2023.06.13 08:00

【トランプ氏起訴】機密情報の扱い方に驚く

SHARE

 米国の次期大統領選への影響はもちろん、国家安全保障上の機密を含む文書のずさんな取り扱いは他国との関係にも響く。隠蔽(いんぺい)工作も疑われ、司法の判断が注視される。
 米連邦大陪審は私邸への機密文書持ち出しを巡ってトランプ前大統領を七つの罪で起訴した。前大統領はすべての罪状について無罪を主張するとみられる。
 連邦法違反で大統領経験者が起訴されるのは初めてだ。不倫もみ消し問題のニューヨーク州法違反での起訴に続き刑事責任を問われる。
 正副大統領の公務記録は退任後、米国立公文書館に引き渡すことが義務付けられている。南部フロリダ州の前大統領私邸から300点以上の機密文書が見つかり、特別検察官が捜査していた。
 国防情報を不当に保持していたスパイ防止法違反や司法妨害の共謀などの罪に問われた。起訴状によると、機密文書には核兵器や同盟国の軍事的弱点を示したもの、外国による攻撃への報復計画も含まれる。
 機密文書は私邸の事務室以外に、宴会場やトイレなどにずさんに保管されていた。驚くほどの扱い方だ。また起訴内容には、付き人と共謀し、文書を保持していないと虚偽の説明をするように弁護士に持ちかけていたことなども含まれる。
 前大統領は2021年、2回にわたり米軍の軍事作戦に関する文書や地図を機密と知りながら閲覧権限のない外部関係者に見せていたようだ。機密文書を保持していることを承知していたとされ、機密保持に対する意識の低さが鮮明になる。
 もっとも、バイデン大統領も自宅や事務所から副大統領時代などの機密文書が見つかっている。発覚後の対応はもちろん重要だが、そもそも機密文書の取り扱いが徹底されていないのは重大な問題だ。
 前大統領は24年大統領選へ共和党候補の指名を争う。昨年夏に家宅捜索が入ると、前大統領はバイデン政権との対決姿勢を強め、再選出馬への支持獲得と連動させた。不倫もみ消し問題での起訴も政治迫害だと訴え、候補者争いへ向けた支持率向上につなげてきた。
 今回の起訴でも自らが先行して事態を明かして批判することで、支持拡大へ攻勢を強める思惑がにじむ。共和党支持者には起訴を政治的とする見方が多く、前大統領は指名争いを引き続き優勢に進めているようだ。ただ、他候補からの攻撃や一部の党支持層の離反も想定され、波乱要因であることは間違いない。
 一方、民主党支持者は起訴を正当とみる。党派による認識の違いは鮮明で、分断がさらに深まりそうだ。
 前大統領は司法手続きを遅らせる狙いもうかがえ、裁判は長期化が予想される。また、前大統領は司法権の乱用と反発しているだけに、司法の中立性が取り上げられる局面が今後も想定される。
 特別検察官は21年の議会襲撃を巡っても前大統領を捜査している。手続きに疑念が向けられないように厳正な姿勢が求められる。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月