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2023.06.01 08:00

【北朝鮮の「衛星」】地域を不安定化させるな

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 軍事的脅威を強めても孤立を深めるだけだ。地域の不安定化を加速させる行為は認められない。手詰まり感は拭えないが、緊張を高めないために交渉への道を粘り強く探っていくことが必要だ。
 北朝鮮メディアは、国家宇宙開発局が北西部東倉里(トンチャンリ)の西海(ソへ)衛星発射場から軍事偵察衛星を打ち上げたと報じた。北朝鮮の「衛星」打ち上げは2016年以来となる。
 北朝鮮は21年の朝鮮労働党大会で、衛星開発を国防5カ年計画の「五大重点目標」の一つに置いた。昨年には衛星開発の実験を名目に弾道ミサイル発射を行っている。
 米韓の奇襲攻撃を警戒する北朝鮮は、その兆候を把握するために軍事偵察衛星の運用を急いでいるとされる。情報収集能力を高め、予兆には先制攻撃を辞さない姿勢だ。
 北朝鮮は今回の打ち上げは失敗と認めた。ロケット2段目のエンジン点火に異常が発生し、朝鮮半島西方の黄海に墜落したという。原因を「新型エンジンシステムの信頼性と安定性が低く、燃料特性が不安定だった」とする。
 日本政府は、宇宙空間には到達していないとの見方を示す。韓国は長距離弾道ミサイルと断定し、ミサイルの一部とみられる物体を回収した。分析を急ぎたい。
 失敗を受けて北朝鮮は、再打ち上げを可能な限り早期に行うようだ。打ち上げ予告は6月11日までで、自衛隊は迎撃態勢を維持する。北朝鮮は衛星運用を「国家防衛力建設の最重要の先決課題」と位置付けるだけに、期間終了後も連続した打ち上げが想定される。対策を怠れない。
 北朝鮮は今回、フィリピン東部などの海上3カ所に危険区域を設けると日本側に連絡した。また、発射期間も予告している。確かに発射は期間内で、予告した方向だったようだ。しかし、それで安全が確保できるわけではない。
 危険区域はいずれも日本の排他的経済水域(EEZ)外だが、浜田靖一防衛相は自国領域に落下する事態に備え自衛隊にミサイル撃墜を命じる「破壊命令」を発出した。北朝鮮のミサイル技術の向上は新たな緊張を生んでいる。
 日本政府は沖縄県を対象に全国瞬時警報システム(Jアラート)で発射を速報した。沖縄では接近する台風2号への警戒も続く。緊張と混乱を招く北朝鮮の行動は許しがたい。
 Jアラートはその後、日本に飛来しないと判断して、避難の呼びかけを解除した。4月には北朝鮮弾道ミサイルの落下情報を巡り、市民生活に混乱が生じたことを受け、呼びかけ解除の運用変更などが行われた。情報伝達の改善はもとより、探知や予測精度の向上が欠かせない。
 日本政府は、弾道ミサイル発射は国連安全保障理事会決議違反だとして厳重に抗議した。だが、安保理での制裁強化には中国とロシアが反対するとみられ、実効性ある対策は取りにくいのが現状だ。中国は北朝鮮への批判を避けているが、大国としての責任を意識する必要がある。

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