2023.04.27 08:00
【スーダン退避】停戦へ国際社会の圧力を
戦闘が続くアフリカ北東部スーダンで、首都ハルツームで退避を希望していたすべての在留邦人と家族が国外退避した。フランスや国際赤十字の協力で出国した人らと合わせ、60人近くが退避した。
邦人はほかに、比較的状況が安定している南部の国境付近に1人いる。また退避を希望せず残留している人も少数いるという。安全を維持しながら、状況の変化に対応した支援に万全を尽くしたい。
スーダンでは正規軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の交戦が続く。このため各国は国外退避への動きを強めている。
だが、国際空港の使用は周辺で戦闘があり困難視された。市街戦で退避者の集合すら危ぶまれたという。軍とRSFが3日間の停戦で合意したことで退避計画を実行したが、情勢は流動的だった。
自衛隊輸送機で出国した人は、ハルツームから国外脱出の拠点となる北東部ポートスーダンまで陸路で移動した。長い車列が慎重に進み、平時の2倍以上の30時間超かかったようだ。周辺国ジブチに待機していた自衛隊機がポートスーダンに移り退避者を乗せてジブチに戻った。
退避協力はフランスにとどまらない。ハルツームからポートスーダンに向かった韓国人らの車列に日本人が同乗し、現地情勢に詳しいアラブ首長国連邦(UAE)が移動を助けたとの報道もある。岸田文雄首相がこれらの国や国連に謝意を表明した。一国での危機対応は困難を伴う。関係をさらに強化して今後の対応に生かすことが重要だ。
世界保健機関(WHO)のまとめでは、この戦闘で死者は450人を超え、4千人以上が負傷した。ハルツームでは戦闘の影響で食料や燃料、医薬品などの不足が深刻化している。スーダンは戦闘前から人口の3分の1が困窮し、人道支援の必要性が指摘されてきた。人道状況の一段の悪化が懸念される。
さらに、コレラ菌などが保管されている国立公衆衛生研究所が占拠されたとWHOが明らかにした。技術者が追い出され、停電が起きているという。病原体が外部に流出するバイオハザード(生物災害)の恐れがある。どちらが占拠しているか不明だが、危機的な状況を招きかねない。正常化を急ぐべきだ。
国連のグテレス事務総長は「権力争いが国の未来を危険にさらしている」と非難し、双方に恒久的な停戦を求めた。しかし、戦闘は長期化が危惧される状況だ。
双方はそれぞれの支配地域で、退避する車列を警護したとも伝えられる。国際社会を意識した行動にもみえるが、まずは新たな停戦合意を完全に守ることだ。緊張緩和へ各方面から圧力強化が求められる。