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2023.04.26 08:42

家族の死、手続き負担減へ 高知県内市町村、一元化へ工夫【なるほど!こうち取材班】

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家族を亡くした住民の手続きの相談に乗る高知市の「おくやみ窓口」(高知市役所)

家族を亡くした住民の手続きの相談に乗る高知市の「おくやみ窓口」(高知市役所)

 家族が亡くなった際、遺族が向き合わなければならないものに役所での大量の書類手続きがある。戸籍に始まり、年金や健康保険、税や水道…。悲しみを抱えながらの不慣れな作業の負担は大きい。高知市や南国市は手続きの案内を一元化する「おくやみ窓口」を設置するなど、県内自治体も住民の負担軽減に知恵を絞っている。「なるほど! こうち取材班」(なるこ取材班)が調べた。

■何度も事情を

 「人が亡くなると、こんなに手続きがあるのかと気が遠くなった」

 そんな投稿を寄せたのは、昨夏に夫を病気で亡くした高知市の60代女性。喪失感で外出する気力が湧かず、各課に電話をかけて手続きしたが、「高齢の遺族だと本当に大変だと思う」と振り返る。

 この女性は市役所に出向けなかったが、同市は新庁舎が完成した2020年1月から、1階に「おくやみ窓口」を設けている。

 故人の状況などによって異なるが、死亡に伴う行政手続きは高知市で最大21課にまたがる。以前は遺族が自分で必要な手続きを調べて各課を回り、何度も事情を説明したり、名前、住所など同じ内容を何枚もの書類に記入したりする必要があった。

 同窓口では聞き取りを基に必要な手続きをまとめて案内。手続きごとに書類などを整理し、各担当課でスムーズに手続きできるようサポートする。

 死亡届を出す人の6割近くが利用し、予約窓口はいつもほぼ満席。21年度は8人体制だったが、22年度からは12人に拡充した。担当者は「何から手を付けていいか分からない人も多い。役所以外の手続きも含めて案内し、少しでも負担を減らしたい」とする。今後もさらなる負担減に向けた方法を検討していくという。

 南国市も市議らの要望をきっかけに21年8月、同様の窓口を開設。22年度の利用率は約3割で、利用者アンケートの満足度も高く、市民課は「利用率が伸ばせるようさらに周知を進めたい」という。

■座ったままで

 ただ、高知市も南国市も基本的には案内を一元化した形で、手続き自体のワンストップ対応にはなっていない。人員確保のほか、他課から職員を呼ぶのもハードルが高いという。

 一方、比較的規模が大きくない自治体では、遺族が役所の中を動き回らずに1カ所で用事を済ませられるよう、実質的にワンストップ対応している所も多い。

 四万十市や宿毛市は各課の担当者が交代で窓口に来て、遺族は1カ所に座ったまま手続きが済む。北川村は担当課が異なる水道や税の手続きも基本的な内容は住民課で対応するなど、15市町村が「ほとんどの場合、1カ所で手続きできる」としている。ワンストップではないが、複数の課の手続きをまとめてできるようにしているという自治体もあった。

 ワンストップ窓口を検討したが、導入を断念した自治体も複数ある。共通していたのは「専門的な知識が求められる内容もあり、全ての手続きを職員一人が把握するのは難しい」との悩み。ただ、その場合も、氏名や住所は役所が印字するなど工夫しているところも多かった。

 自治体職員らが「おそらく一番手続きが多いライフイベント」と口をそろえる〝おくやみ〟。冒頭の投稿者は事務処理だけでなく、「各課に連絡するたびに、夫の死を何度も突き付けられるようでつらかった」。その中で「『お悔やみ申し上げます』の一言がありがたかった」と心のケアの大切さにも言及した。

 高知市は「おくやみ窓口」を担当する職員に数カ月かけて研修を行っている。そこでは遺族への声のかけ方も指導するという。(森田千尋)

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