2023.04.25 08:42
無人の里に10年ぶり池川神楽 出身者ら神社修繕祝う 高知県仁淀川町
迫力ある舞が披露された池川神楽の奉納(仁淀川町用居乙の岡山二所神社)
地元出身者らの話によると、瓜生野では60年ほど前まで約50世帯、200人ほどが暮らしていた。かつては和紙の原料となるミツマタが多く栽培され、人々の生活を支えていたという。現在は2世帯2人の住民登録があるが、実際は県外などで暮らし、集落は無人になっている。
そんな瓜生野で神楽が見られたのは10年ほど前まで。地区で暮らしていた男性が戦死した父を思って1人で舞い、集落の人々が集まって見守っていたという。しかし、地区の人が減っていく中で男性の姿も見られなくなった。
今回の奉納は、神社の修繕がきっかけ。老朽化で雨漏りし始めたため、地区出身者らが約600万円を寄付して屋根を新調した。その完成を祝し、池川神楽保存会のメンバーが神社を訪れ、舞を披露した。
地区の出身者や町民ら約40人が見守る中、保存会のメンバーは約2時間かけて8演目を上演。お盆を持って踊る「和卓(おしき)の舞」、翁(おきな)のゆったりとした所作が特徴の「児勤(こきん)の舞」などを次々と舞ってみせた。
「四天の舞」では、大蛮(だいばん)と呼ばれる鬼神も登場。抱かれた子は健やかに育つといわれ、大蛮は怖がる子どもたちを次々抱え上げ、泣き声や叫び声、大人たちの笑い声などが集落にこだました。
「こんだけの人が集まってにぎわったのは久しぶり」と、同神社の井上定光宮司(86)はしみじみ。「氏子たちの協力で、この神社は成り立っている。またこの場所で神楽を見たいね」と話していた。(乙井康弘)