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2023.04.21 08:00

小社会 アイドル犬りん

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 犬を飼うと人は幸せになる、らしい。その説にはちゃんと根拠があり、例えば、触れあうことで何種類かの「幸せホルモン」が分泌されるとか、規則正しい散歩が健康指標を改善するとか。

 そんな小理屈よりもこの一枚の方が雄弁だ、というような写真が先日の本紙に出ていた。土佐町の高齢者施設でアイドル犬が入所者を癒やしている、との記事。犬とくつろぐお年寄りの姿はほほ笑ましく、見たこちらまでハッピーになったが、アイドル犬と聞き、高知農業高の「りん」を思い出した。昨春旅立って1年がたつ。

 りん(雌の雑種)は20年前、箱に入れられて川に流されていたところを助けられ、生徒たちが世話し始めた。

 やがて学校に溶け込み、教職員の集合写真の中央に陣取るようなアイドル的存在に。行事での活躍や生徒との絆などエピソードは多く、「教育効果も大きかった」と教員は話す。メディアにも数多く取り上げられた。

 ただ、特異なケースでもあった。りんは周囲や環境に恵まれたが、飼う責任や手間、衛生面の課題、教員の多忙化や異動を考えれば、教育現場で犬はなかなか飼えないものだ。犬どころか、動物を飼う事例自体が減りつつある。りんの存在は今の学校を取り巻く状況も浮かび上がらせる。

 りんが在校18年間で見送った生徒は、ざっと3千人に上る。亡骸(なきがら)は丁寧に葬られ、供養した納骨堂には今も卒業生が手を合わせに来るという。

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