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2023.04.19 08:45

議員専業とても無理 黒潮町定数割れ、若手擁立不発 田野町、仕事辞めて新人出馬―2023高知 統一選 

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定数割れで無投票となった黒潮町議選。ポスター掲示板の“14人目”は空白のままだった(黒潮町入野)

定数割れで無投票となった黒潮町議選。ポスター掲示板の“14人目”は空白のままだった(黒潮町入野)

 18日告示された町議選で定数割れとなった高知県黒潮町。人口1万人を超える町での定数割れとあって町内には衝撃が走り、町民からは議員定数の削減や待遇改善の要望など、さまざまな声が飛び交った。

 一時は最大で欠員3の可能性もささやかれた同町。危機感が広がった3月以降、町内では候補者を探す動きがいくつも見られた。

 佐賀地域では区長や元町議らが奔走し、元副町長だった74歳新人を口説き落とした。共産党は「定数割れ回避」を大義名分に、75歳現職の引退を撤回。告示1週間前には定数まであと1人という状況にこぎ着けたが、若手への擁立活動はことごとく不発に終わった。

 「欠員が出るのは、町民として恥ずかしい」。そんな思いで、出馬するか真剣に悩んだと明かすのは、農業を営む30代の男性だ。

 仕事は年中忙しく、人を雇って農作業に励む。まだ幼い子どもと過ごす時間が何よりも大切。そんな日常を送っていたある日、町議選への出馬を要請された。

 もし選ばれて町議になれば、自分が暮らす地区だけでなく町全体のために取り組んでいかなければならない。多くの時間を割かれれば、本業や私生活にかける時間は減るだろう。「仕事、家庭、そして議員。それぞれに満足な活動ができるのか…」。自問自答した結果、「今の自分では精神的に持たない」と、断りの返事を入れた。

 それでも男性は憂える。「町の将来について考える若い世代が少ない」。諦めざるを得なかった自身の事情も踏まえ、こう提言した。「若い人が専業で、町のことだけを一生懸命考えて行動できるような待遇改善が必要では」。同町議会の議員報酬は月額18万円。町が発足した2007年から全く変わっていない。

 ただ町内には、議会への厳しい声もある。「町議選? 周りでは全く話題にならない。選挙の時だけあいさつに来るけど、生活を良くしてくれたことある?」と40代女性。別の50代女性も「議員の質問が毎回同じで、まだやりゆうがという感じ。眺める時間も余裕もない」と冷ややかだ。

 そんな町民の政治離れに加え、“地元代表”を送り込んできた地域の活力低下を指摘する声もある。定数割れに終わったこの日、ある70代男性は自嘲気味にこう言った。

 「欠員1でもいい。定数も減したらいい。それが町の実態。ただまあ、議会の質は町民の質でもあるがやけんどね…」(芝野祐輔)

田野町議選 なり手不足、兼業緩和の効果見えず
 18日告示された町村議選で、黒潮町と同様に定数割れの可能性がささやかれたのが田野町(定数10)。3月末時点での立候補予定者は8人で、態度未定の現職1人を加えても9人しか名前が挙がらない状況だった。

 そんな中で急きょ出馬を決め、無投票で当選した神山大亮さん(40)。県外出身で親戚らは町におらず「(無投票で)今回当選しても、4年後はどうなるか…」。議員の仕事で職場を抜けるケースが増えることも心配だった。

 悩んだ末に「町政を変えたい」と心を決めた。ただ、職場は告示前に辞めた。人生を左右する決断が求められるのが選挙への立候補。迷いなく飛び込める人は、そう多くはない。

 この日告示された10町村議選・補欠選挙で無投票は7選挙に上り、地方議員のなり手不足を国に問いかけた大川村の村議選も無風で終わった。同村の新人は1人のみで、7選した現職、和田民夫さん(66)は「議員ができる若い人もおるが、周りが背中を押さないから踏み出せない」とこぼす。

 兼業規制の緩和など、なり手不足解消に向けた改正地方自治法が施行された直後の統一選。しかし黒潮町だけでなく、全国各地で定数割れが続出した。和田さんは「効果はほとんどなかった」と不満顔。和田知士村長(63)は「自治体がそれぞれの事情に合わせ、(被選挙者の条件などを定める)条例を制定できるようにする必要がある」と、抜本的な改革の必要性に言及した。(植村慎一郎、谷沢丈流)

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