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2023.04.17 08:00

小社会 「演説」

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 統一地方選の後半戦がきのう、県内でもスタートした。高知、室戸、宿毛の3市議選が告示され、晴天に恵まれた高知市では早速、候補者が街頭演説などに力を入れていた。

 明治の初め、それまで日本になかった「演説」の概念を広めたのは福沢諭吉という。「学問のすすめ」にある。「演説は英語にてスピイチと言い、大勢の人を会して説を述べ、席上にてわが思うところを人に伝うるの法なり」

 そうやって議論し、「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」を実現せよと言いたかったのだろう。後の自由民権運動にもつながった。ところが、どこでゆがんでしまったのか。言論や集会は次第に統制されていき、終戦まで反体制的な思想は弾圧された。

 戦後、社会党委員長を務めた浅沼稲次郎も戦前・戦中は選挙のたびに妨害を受けたという。戦後は「そんなこともなく明るくなった」(日本経済新聞社「私の履歴書」)と新しい時代を喜んだのだが。
 
 執筆から数年後の1960年、浅沼は演説中に少年に刺殺される。戦後は言論の政治弾圧はなくなったが、暴力による迫害や妨害はなくならなかった。
 
 それはいまも。和歌山で岸田首相が衆院補選の応援演説をしようとしたところ、爆発があった。首相にけがはなかったが、昨夏には安倍元首相が参院選の応援演説中に銃撃され死亡したばかり。諭吉が思い描いたであろう演説のある社会とは遠い姿である。

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