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2023.04.16 08:00

小社会 対話

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 将棋の棋士は対局が終わると、「感想戦」というものをする。あの手はどうだったか。あの局面で別の指し手を選んでいたらどうなったか。長ければ数時間にも及ぶ。

 「感想戦は負けた側のためにある」とは森雞二・九段(四万十市出身)の言葉。「どこが悪かったか納得できないと、終われないんですよね」。それは敗者の気持ちを整える時間であると同時に、奥深い棋理を探究する時間でもある。

 できれば黙っておきたいこともある。それでも、より高みに向かうために、ぎりぎりのところまでそれをさらす。いくら人工知能(AI)が対局を分析する時代になっても、彼らは対話する。

 考えてみれば、対話というのは本来、共に進むためにあるものなのだろう。すぐれた教師や良きリーダーらの言葉がそうであるように、誰かを置き去りにはしない。

 言葉は行き来していても、扉を固く閉じ、内心を遮断したような風景も世間にはあふれる。勝者と敗者、政治的意見の違う者、声の大きな者と小さな者…。互いを結ぶ回路は方々で切れていないか。

 対話型AIとの付き合い方に世界中が悩んでいる。そんな時代に、そんな時代だからこそ、まず人との対話の仕方というものを省みた方がいいのかもしれない。きょう誰かと心が通ったか、誰かを傷つけはしなかったか。「あの人とあんな話ができてよかった」。そんなことを思いつつ眠りにつける日が増えればいい。

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