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2023.04.15 05:00

【陸自ヘリ事故】徹底捜索と原因究明を

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 搭乗していた隊員の発見に全力を挙げたい。海底の地形や水深が影響して作業は引き続き難航が予想される。困難が立ちはだかるが、原因の究明も不可欠だ。
 沖縄県の宮古島付近で10人が搭乗した陸上自衛隊UH60JAヘリコプターが消息を絶った事故は発生から1週間余りがたち、ようやく機体の主要部分とみられる物体が見つかった。海底に残された可能性がある搭乗者の確認を急いだ。
 主要部分は水中音波探知機(ソナー)で発見した。水中カメラの映像には複数の人らしい姿が見えた。水深は約100メートルで、映像では物体は大きく破損している。潜水艦救難艦のダイバーが深い海での作業を可能にする「飽和潜水」を行い、状況の把握などに取り組んでいる。
 捜索は自衛隊の艦艇や航空機、海上保安庁の巡視船が当たるほか、陸上からの活動も含め24時間態勢で続けてきた。海域はサンゴ礁が多数あることに加え、島から離れると急激に水深が深くなることが捜索を阻む要因となった。
 ヘリは陸自で熊本県に拠点を置く第8師団に所属する。師団は有事になれば沖縄方面への派遣が想定される。就任したばかりの師団長らが搭乗し、地形を視察するため宮古島などを周回する計画だった。航空自衛隊宮古島分屯基地を離陸し、ほぼ予定通りに飛行していたが、約10分後に行方不明となった。
 それまでは飛行ルート周辺の2カ所の空港と通常通りに複数回交信している。最後の交信からレーダー上で機影が消えるまで約2分しかたっていない。緊急事態の発生を管制に伝えた形跡もなく、自動で出る救難信号を管制が受信していないことも判明している。
 ヘリが飛行していた時刻はまだ明るく、視界は良好だったという。また、機体は3月下旬に安全性の点検を行っていた。
 これまでの捜索で発見、回収した燃料タンクとみられる物体や回転翼のブレード(羽根)などには、切断されたような跡が見られた。こうしたことから、着水時に衝撃を和らげる方法がとられず、海面に激しく衝突した可能性が指摘される。
 現状では機体の不具合か、人為ミスかは判然としないが、異変を知らせる間もないほどの突発的な異変が起きたと推察される。フライトレコーダー(飛行記録装置)の解析が特に重要となる。潮の流れが複雑で回収には困難が伴うことが想定されるが解明には不可欠だ。
 この型のヘリは陸自の隊員や物資の輸送を主な役割とする。ほかにも離島部の急患輸送や被災地の救助活動などに使われる。昨年段階で40機を保有している。
 多用途に活用する機体だけに、今回の事故原因を究明しなければ今後の活動にも影響しかねない。まず不明者全員の確認を優先することだ。その上で、再発防止へとつなげるために機体の引き揚げも想定しながら、詳しい原因を解明していくことが求められる。

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