2023.04.15 05:00
小社会 「ヘリコプターの日」に
翼の回転で空に舞う―。600年前にそんな発想をした天才画家に改めて脱帽するが、形になるには時間がかかった。最初に模型が浮いたのが18世紀。人が乗り始めたのは20世紀。開発の歩みは飛行機より随分遅い。それだけ難しかったということだ。
実用化がもたらしたものの大きさは、言わずもがなだろう。軍事利用の罪はあるが、人命救助や探索などにはもはや欠かせない。「ヘリコプター全史」の著書がある米の評論家ジェイムズ・R・チャイルズ氏は、ヘリの万能性から「機械仕掛けの神」とたとえた。古代ギリシャ演劇の世界で使われ、「最終手段」という意味を持つ。
その「神」に一体、何が起きたのか。沖縄県宮古島沖で消息を絶った陸上自衛隊ヘリがやっと見つかった。墜落原因に見当がつかない、とにかく不思議な事案である。同型機も多い。究明が急がれるが、空の自由と危険性は裏表であることを改めて見せつけたとも言える。
一方で、プロペラ飛行の技術革新は止まらない。人を乗せる「空飛ぶクルマ」。商用運航が再来年の万博の目玉とされ、先のNHK朝ドラでは物語の軸にもなった。
「神」はより高みに向かう。だが「安全神話」を重ねるのは禁物だ。