2023.04.01 08:00
【こども家庭庁】縦割り解消の成果上げよ
子どもをめぐる問題は多岐にわたり、深刻さも増している。国の活力に直結する少子化も顕著だ。
その中で、子どもを社会や政策展開の中心に据え、省庁再編した意義は小さくあるまい。掲げる「こども真ん中社会」の理念を、速やかに具体化していく必要がある。
こども家庭庁は首相直属で、厚生労働省や内閣府の関連部局を移して350人体制で始動する。子ども関連の政策立案のほか、妊娠・出産の支援、居場所づくり、保育の拡充、虐待防止、貧困対応、障害児支援などを幅広く担う。
新たな取り組みも行う。保育所や幼稚園に通っていない「無園児」への対応や、性犯罪の加害者が子どもに関わる仕事に就けないようにする無犯罪証明制度も検討する。
子どもに関わる問題は複合的な場合が多く、教育や福祉、経済など多面的な支援態勢が求められる。こども家庭庁が一元対応することで、包括的な政策が立案され、施策の連携などがスムーズになれば、取り組みの実効性は上がる。
ただ、幼稚園や小中学校など義務教育分野は、引き続き文部科学省の所管となった。両省庁は連携態勢を強調するが、縦割り構造は残り、責任が曖昧になる可能性がある。
こども家庭庁は、他省庁の対応に改善を求める「勧告権」も持つが、どこまで機能するかは未知数だ。
中央レベルで対応が一元化されたとしても、実際に取り組む主体は地方自治体になる。地方行政の縦割り構造は残ったままかもしれず、今回の省庁再編とどう連動するのかイメージしにくい。現場に混乱がないよう丁寧に調整する必要がある。
重要なのは、「こども真ん中」の発想が、省庁の組織論だけにとどまらないことだ。
こども家庭庁発足に合わせて、こども基本法も施行された。今後、基本方針となる大綱作りが始まる。岸田文雄首相は子ども関連予算の「倍増」も打ち出す。組織、法律、予算それぞれの面で環境を整え、成果を追求しなければならない。
課題は財源確保だろう。「倍増」の掛け声の下、こども家庭庁の2023年度当初予算は約4兆8千億円で、厚労省と内閣府の関連部署の22年度予算と比べて、取りあえず1200億円上積みされた。
その上で政府は3月末、「異次元の少子化対策」のたたき台を示し、児童手当の拡充や、誰でも通園できる制度の創設、子育て世帯向けの住宅ローンの優遇などが並んだ。
ただ、これまで同様、財源は6月にまとめる「骨太の方針」で大枠を示すとし、踏み込まなかった。いずれも実現できるに越したことはないが、国民負担増なしでは見通せないのではないか。その可能性を示さないままの施策の羅列では、統一地方選対策だと言われても仕方ない。