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2023.03.31 05:00

【小堺一機の楽しみかけ流し #5】エンドマークの後が人生 寄り添ってくれた言葉

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 筆者(手前左)と家族

 毎日「楽しいことばかりやっている」と言うタレント・小堺一機さんが見聞きしたことや、日々考えていることをつづる連載第5回。


   ×   ×


 小学生の頃、テレビの洋画劇場で「ローマの休日」を見た。何げなく母に「ラストシーンで新聞記者の人が一人で靴音を響かせて去って行くところ、なんだか、悲しいでもさみしいでもない気持ちになっちゃうよ」と言ったら、母が「そういうのを“切ない”って言うのよ。もう少し大人になったら一機も分かるときがくるわよ」と答えた。母がそんなふうに僕の言葉に真剣に向き合ってくれたことに少し驚いたが、なんだかうれしかった。


 そして母は続けて「あの後アン王女も新聞記者のジョーも、毎日毎日『あぁ、彼はどうしているかしら?』『彼女はどうしているだろう?』と思い出を胸に、お互いを恋しく思うのよ。でもね、あるとき気がつくと、思い出さない日がやってくるのよ」


 子どもの僕にもそれはよく理解できた。転校が多かった小学校時代、何度も思い出していた前の学校の友達のことも、いつか忘れていったから…。そしてまた、母は続ける。


 「いい、一機。映画はいいところでエンドマークが出るの。でも現実の世界では違う。エンドマークの後が人生よ」。これもなるほどとふに落ちた。その後何度か「あぁ、今エンドマーク出てくれ!」という人生の瞬間があった。


 父との会話で覚えているのは、僕が中学2年の時、色覚検査で「赤緑色弱」と判明した時のこと。進学したかった高校への受験資格がないと分かって、さすがに落ち込んでいる僕に「おまえ、色弱なんだってな!」と笑いながら言ってきた。ムッとしていると父は続けて「いいな! 人と違う色が見えるんだろ!」と。この言葉になぜか僕はぱっと気持ちが晴れた。そうか、人と違う色が見えると思えば良いのか!


 教えようとか導こうとかのスタンスではない両親の言葉が、僕にはとてもうれしく、今でも感謝している。そう、両親は寄り添っていてくれたんだ。そういう人間に僕もなりたい。(タレント)


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 こさかい・かずき 1956年千葉県生まれ。84~2016年「ライオンのごきげんよう」などフジテレビ系昼のトーク番組を司会。単独トークライブ「小堺一機とおしゃべりLIVE」開催(不定期。オンライン配信も)。著書に「映画はボクのおもちゃ箱」。



 「小堺一機とおしゃべりLIVE」直近では4月15日、東京「三軒茶屋GrapeFruitsMoon」で開催。ライブ配信(アーカイブ視聴可能期間)あり。詳細は所属事務所「浅井企画」公式サイトで。

(c)KYODONEWS

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