2023.03.30 08:00
【県議選あす告示】地域を見つめ直す機会に
選挙の焦点は、深刻化する人口減少対策や新型コロナウイルス禍からの立ち直りなどになろう。ただ争点には乏しい。それだけに候補者は、自分の言葉で、より具体的に、地域の将来を訴えてもらいたい。
県議会は、年を追うごとに存在感が薄れている状況と言ってよい。
そもそも、二元代表制をとる地方では、予算を編成する知事の権限が圧倒的に強い。県政の透明化が進み、働きかけ的な行動にも厳しい目が向く中、県議の影響力も落ちてきたのが実情ではないか。
それでも橋本県政下では、執行部と厳しく対峙(たいじ)して存在感を発揮していたが、施策の方向感が合致した前・尾﨑県政以降は、埋没してしまった。
本紙の県政世論調査はその状況を物語る。近年、県議の活動に「不満」と答える人は5割前後で、その理由に「活動が見えない」が突出する状況が続く。県議選の投票率も下がり続け、直近2回は50%を割り、求心力の衰えを露呈した。
だからこそ、改めて県議会の存在意義を問い直す必要がある。「住民の声を県政に」といった訴えは当然のことだ。それ以上の存在価値を個々が追求していく必要がある。
磨くべき一つはやはり県政のチェック機能だろう。今任期中、浜田省司知事のコロナ対応に、苦言を呈したのは効果的だった。県庁はそれによって引き締まった。
だが、なれ合いに陥った面はなかったか。例えば、昨年の県内出生数は初めて4千人を割り、全国最少だった。県政の対応を問われても仕方ない結果である。そこに県議会の責任はないと言い切れるだろうか。
任期中、県民と意識がずれていないか疑問を持つ事案もあった。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題で、「関係断絶と被害防止・救済を求める意見書案」が否決されたのは、いくら釈明しようとも不可解だった。教団を巡っては接点があった現職もいる。改めて説明責任が問われる。
意見書の否決は自民党の中央の事情からだろう。県議会にも国政与野党の図式は持ち込まれる。実際、県議選の焦点の一つには各党の勢力変動が挙がる。ただ、地方自治はそれがなじまないことがある。「県民優先」をしっかり共有すべきだ。
気がかりなのは、半数以上の9選挙区で無投票が見込まれていることだ。理由は一通りでないだろうが、地域の衰退やなり手不足の傾向と無縁ではあるまい。
全国的に、1人区で、自民党系現職がいるケースが多いという。無投票は県政に対する住民の関心低下を招く。他県では無投票を減らすために選挙区を広げ、議員定数を増やす動きもある。検討課題だろう。
身近な存在の地方議員の顔ぶれは、地域の将来に直結する。有権者も、1票の重みを感じ、地域を見つめ直す機会にしたい。