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2023.03.13 08:00

【入管法改正案】人権の視点を忘れるな

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 人権擁護が後退するようでは改正の目的を疑われる。難民認定の少なさや、長期収容は国連機関からも非難されてきた。国際水準をにらみながら、現行制度の不備を修正することが必要だ。
 外国人の収容・送還に関するルールを見直す入管難民法改正案が国会に提出された。非正規滞在者の強制送還を徹底することで、収容長期化の解消を図る内容だ。
 2021年に世論の反対で廃案となった旧案を大筋で維持している。当時は与野党の修正協議で内容がまとまりかけたが、スリランカ人女性の死亡前の映像開示を与党が拒み、協議は決裂した。
 入管当局は、送還逃れを狙い申請を繰り返す事例が多いとみる。難民申請中の場合は本国への送還が停止されるためだ。このため改正案は回数を原則2回に制限する。3回目の申請以降は「難民認定すべき相当の理由」を示さなければ送還する。
 斎藤健法相は、保護すべき者を確実に保護し、ルール違反には厳正に対処する制度だと改正の狙いを説明する。だが、これに対し支援者らは、本国での迫害などで命の危機にさらされる恐れがあり帰国できない人もいると強く批判している。
 国外退去処分を受けても帰国しない人には罰則を新設する。だが非正規滞在者は減少傾向にあり、罰則の必要性に疑問が向けられる。
 また改正案では、不法滞在者の入管施設収容に代わり「監理措置」を新設する。支援者ら「監理人」の下で一時的に社会内で生活することを認めるとする。
 監理措置にできるかどうかの判断は収容された本人の不利益も考慮することや、収容中も3カ月ごとに監理措置への移行の可否を判断する規定などを盛り込んだ。
 人権侵害とも指摘される「原則収容主義」の転換が図られるようにもみえる。しかし、監理措置は原則ではなく、判断するのは入管側となる。現行無期限の収容には期限が設定されないままで、長期収容が完全に解消されるわけではない。修正協議で上限を6カ月とした水準は後退している。
 認定基準に満たなくても、難民に準じる人を「補完的保護対象者」として在留を認める制度の創設も盛り込んでいる。紛争から逃れた人たちを想定する。
 間口が広がるのならいいが、問われているのは難民認定の在り方そのものだ。野党は入管庁から独立した認定手続きを担う委員会設立などを求めてきた経緯がある。
 日本は欧米に比べて難民認定が少ない。21年の認定者は74人で、認定率は1%を下回る。22年はアフガニスタン政変で日本に退避したアフガン人らを認定して前年を上回っているが、認定に消極的な日本の姿勢が根本的に変わったわけではないと指摘される。
 改正案は21年の修正項目がほとんど反映されていないため、与野党の「対決法案」になるとみられる。懸念と真剣に向き合うことだ。

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