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2023.02.28 08:00

小社会 土佐路もすべて

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 日本近代文学の傑作は「木曽路はすべて山の中である」との一節に始まる。島崎藤村の代表作「夜明け前」は、山また谷の木曽山中が舞台。

 今から170年前のペリー来航の時代から書き起こす。鎖国国家は難局を迎え、山間にも革命の息吹が駆け抜ける。幕政の腐敗に苦しむ民人の嘆きと呼応するように、「御一新(ごいっしん)」と呼ばれる明治新政府の時代へと移ろう。

 往来する志士の度外れた興奮。内戦に向かう官軍兵士たちの足音、江戸から離散する人の噂(うわさ)。新紙幣の発行、葬られる旧弊。山深くの街道から、時代の実相を見事に活写する。

 藤村の父をモデルとする主人公の半蔵は、自身の庄屋の身分が消される時代の流れにも「理想に従えば当然」と私心なく思う人物だ。傍らで国学に精励、山林に自由に立ち入れた古代へ、そして自然回帰へと夢想する。しかし新政府は皮相的な西洋化にひた走る。苛烈(かれつ)な山林規則によって、民人からは再び山林を取りあげた。

 一見明るい時代を前に見ながら、主人公の心はしおれてゆく。待ちわびた夜明けは来なかった。大長編のクライマックスは彼が山間に発する、その静かな一言だ。「御一新がこんなことでいいのか」

 130年前の今月、20歳の藤村は親友を訪ねて土佐路を踏む。当地との縁は途切れず、60代で書き終えるこの大作にも土佐を巡る語りは再三登場する。冒頭の一節。「土佐路もすべて―」と、ふと置き換えてみたくなる。


2月28日のこよみ。
旧暦の2月9日に当たります。ひのと み 九紫 仏滅。
日の出は6時36分、日の入りは18時01分。
月の出は11時26分、月の入りは1時32分、月齢は7.8です。
潮は小潮で、満潮は高知港標準で0時18分、潮位108センチと、10時18分、潮位131センチです。
干潮は4時04分、潮位99センチと、18時41分、潮位47センチです。

3月1日のこよみ。
旧暦の2月10日に当たります。つちのえ うま 一白 大安。
日の出は6時35分、日の入りは18時02分。
月の出は12時13分、月の入りは2時30分、月齢は8.8です。
潮は長潮で、満潮は高知港標準で11時40分、潮位120センチです。
干潮は20時25分、潮位44センチです。

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