2023.02.28 05:00
【鳥インフル】世界規模で警戒強化を
むろん、直ちに人でのパンデミック(世界的大流行)につながるわけではないが、油断もできない。鳥ウイルスは高い頻度で変異を起こす。各国が連携し、世界規模で警戒・監視態勢を強化する必要がある。
鳥インフルエンザはA型インフルエンザウイルスに感染して起きる鳥の病気。2003年以降、世界で約870人が感染しているが、多くは生きたままの鶏を販売する市場があるような地域での発生という。通常の環境であれば、人間に直接うつって流行を引き起こしたり、人から人へ感染したりする可能性は低いとされている。
ただ、感染を繰り返す過程や、ブタなど第3の動物に感染した場合に遺伝子が変異する恐れが高まる。その中で人に感染する変異ウイルスが出現してしまうと、免疫がないため大流行につながりかねない。20~21世紀ではスペイン風邪など計4回の大流行が発生した。
今季の鳥インフルエンザの流行では今月24日現在、国内で70件以上の発生例が確認され、約1478万羽の鶏などが殺処分された。北米でも拡大し、日本と同様に鶏卵価格の高騰を招いている。世界的なウイルスのまん延は、人間にとって新たなインフルエンザが出現する恐れが高まっているのは確かだろう。
ペルーでは昨秋以降、ペリカンなど野鳥での流行に加え、600頭以上のアシカが死に、一部でウイルスが検出された。スペインでも昨年10月、毛皮用ミンクの飼育場で感染拡大があったとみられる。
哺乳類などでの感染が広がれば、それだけ人に感染する可能性は高まる。世界保健機関(WHO)も各国に監視を呼び掛ける。危機感を持って自然からの警鐘を受け止めなければならない。
近年の感染症ではWHOや発生国の初動のつまずきが目立つ。00年代に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)では当初、中国の患者隠しともいえる対応が、国際社会から批判された。
3年前の新型コロナウイルス感染症でもWHOは後手に回った。中国で連日、感染確認が千人単位で積み上がっても「時期尚早」と判断を遅らせ、緊急事態宣言は各国が自国民退避に乗り出した後だった。背景にはWHOに多額の分担金を拠出する中国への配慮があったとされる。同じ過ちを繰り返してはならない。
感染症がいったん、パンデミックに至れば多くの人命が失われ、経済などへの影響も長引く。何より流行を抑え込む初動の対応が重要になる。日本でも新型コロナ対策で緩和が進んでいるが、これまでの対策の検証をしっかりと行い、次の危機に備える視点が欠かせない。