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2023.02.22 08:00

【「年収の壁」問題】高まる見直しの必要性

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 パート労働者らが働く時間を抑える一因になっている「年収の壁」問題に対し、岸田文雄首相が見直す意向を示した。
 現行制度は、女性の働く意欲や多様な働き方を阻んでおり、問題が多いのは明らかだ。見直しに本腰を入れて取り組んでもらいたい。
 現在、配偶者がいてパートで働く場合、年収130万円(企業規模によっては106万円)を超えると扶養から外れ、社会保険料を負担する必要がある。103万円を超えると多くの企業で配偶者手当がなくなり、150万円超で所得税の配偶者特別控除を満額受けられなくなる。
 こうした「壁」により、就業時間を延ばすと逆に手取りが減ることがある。いわゆる「働き損」を避けるため、就業時間を調整する人は少なくない。民間シンクタンクが昨年行った調査では、夫がいてパートで働く女性のうち、就業調整をしている割合が約6割に上った。
 社会保険料の支払いは将来の年金額に反映されるなど、必ずしも「損」でないが、やはり手取りが減る抵抗感は強いのだろう。
 フルタイムかそれに近い水準で働けば、働き損を上回る手取りは得られる。ただ、子育て中の母親らの中には、もっと働きたいとの意欲を持ちつつも「フルタイムは負担が大きい」という人もいるだろう。見直されれば働き方も広がるはずだ。
 「年収の壁」はこれまでも議論されてきたが、見直しの必要性は近年特に高まってきたと言える。
 少子化などで人手不足が深刻化する一方、最低賃金の大幅上げが続いている。就業時間を抑える傾向は強まり、人手不足感に拍車を掛けている。この「負の循環」はさらに続くのではないか。
 物価が高騰する中、家計の間接的なバックアップへ、世帯収入を上げる手段も増やすべきだ。
 女性活躍・登用の環境づくりを進める必要があるのは、言うまでもない。経済的な自立へ働く意欲があるのであれば、それを後押しするのは当然のことだ。
 制度見直しが一筋縄でいかないのは事実だろう。社会保険制度や税制の改正が不可欠で、使用者側に新しい負担が生じる可能性もある。だからこそ長らく懸案になっており、抜本対応が取られてこなかった。
 与党は、国が一時的に保険料負担を補助し、その間に抜本改革に取り組むよう提案した。この案には、財源論や、単身世帯者との公平性の兼ね合いなど課題もある。
 ただ、「男性は外で働き、女性が家を守る」という古い社会に基づく制度である。やはり実態に即した制度に改めていくべきだ。
 岸田政権は、昨年まとめた女性活躍推進の重点方針(女性版骨太の方針)でも見直しを掲げている。だが、具体的な道筋は描いていないようにも見える。
 何らかの課題に対して「やっている感」を演出するような政治手法は岸田政権の課題でもあるだろう。結果にこだわる姿勢を求めたい。

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