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2023.02.15 08:00

【日銀総裁人事】現政策のつけにどう対処

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 政府が4月に任期満了を迎える黒田東彦・日銀総裁の後任に、経済学者の植田和男氏を充てる人事案を国会に提示した。経済政策の要である日銀トップが10年ぶりに代わることになる。
 黒田氏が続けてきた「異次元の金融緩和」はこのところ、副作用も目立っている。日本経済は物価高騰や新型コロナウイルス禍も続いており、先行きは楽観視できない。
 新総裁の役割は大きく、国会は人事案をしっかりと審議し、見極めてもらいたい。
 日銀総裁に日銀と財務省(旧大蔵省)出身者以外が就くのは異例だが、植田氏は長年、大学で金融政策を研究してきた。1998年から7年間、日銀審議委員も務めた。
 国際金融や景気刺激策にも明るいとされ、岸田首相はそうした実績を踏まえて候補者に決めたのだろう。焦点になるのは、その植田氏が現在の日銀の政策をどう評価・分析しているかだ。
 黒田現総裁は就任間もない2013年4月、デフレ脱却を掲げ、2%の物価上昇目標と「異次元の金融緩和」と呼ばれる大規模な金融緩和策を打ち出した。
 低金利策を強化。同時に国債や上場投資信託(ETF)などを大量購入し、市場に大量の資金を供給してきた。これが株価を押し上げたり、円高の是正につながったりした面がある。
 ただ物価は伸び悩み、大規模緩和は長期化。日銀が国債の半分を保有するいびつな状況になり、政府の財政規律が緩んで債務残高が大きく増えたとの批判も増えた。欧米などとの金利格差が拡大し、円安が過度に進む局面もあった。
 物価はその後、新型コロナの大流行やロシアのウクライナ侵攻の影響で高騰したが、賃金は伸び悩んでおり、経済は描いてきたものとはかけ離れた姿になっている。
 コロナ禍などの特殊事情があったとはいえ、こうした問題の是正を求める声が強まっているのは事実だ。つまり、新総裁は異次元緩和の「出口」を探ることが課題になる。現政策のつけにどう向き合うかが問われているといっていい。
 植田氏は現時点では、抱負や政策の方向性についてはっきりとは語っていないが、報道陣に「現状の日銀の金融政策は妥当だ」「当面は金融緩和を続ける必要がある」と述べている。市場に混乱をもたらしかねない急速な金融引き締めには慎重であることがうかがえる。
 一方で、研究者としてこれまで、さまざまな場でいまの日銀の政策の課題も指摘していたようだ。市場とどう対話を図り、軌道修正を図っていくのか注目される。
 政府は副総裁候補2人の人事案も併せて提示した。国会は月内にも植田氏ら3人の所信聴取を実施する方向で検討しており、来月中旬までに人事案を採決する見通しだ。
 3人は日本経済の行方に重責を担う。その人事案を審議する国会の責任もまた重い。

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