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2023.02.06 08:38

ワインとすてきな縁を 直販ショップ運営 岡村零奈さん(28)香南市―ただ今修業中

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「ワインを贈りたいという気持ちを引き出します」と丁寧な接客を心掛ける岡村零奈さん(香南市野市町大谷)

「ワインを贈りたいという気持ちを引き出します」と丁寧な接客を心掛ける岡村零奈さん(香南市野市町大谷)


 1月のある日の午前9時、香南市の三宝山にある井上ワイナリー「のいち醸造所」。展望テラス眼下には土佐湾が輝く。ワイン直販ショップのブラインドを上げると、朝日がみるみる差し込んできた。加湿器の水蒸気が店内を潤していく中で、ワイン棚を掃除したり、加工食品をきれいに並べたり。「お客さんの反応を見ながら変えていますけど、陳列に正解はないですね」

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 ワインと縁ができたのは、井上石灰工業(南国市)に事務職として就職してからだ。同社は果樹用農薬も手掛け、栽培を支援。ノウハウを生かして県産ワインに挑戦しようと子会社の同ワイナリーを設立したのが、入社した2016年だった。だが自身はワインに思い入れがなかった。専門学校で学んだのは医療事務だったし、居酒屋で初めて飲んだワインは酸味が気になり、おいしいと思えなかった。以来、好んで飲むのはハイボールだ。

 入社後約5年間で総務、人事、経理と一通り経験。その頃、子会社は三宝山に醸造所やショップの整備を計画しており、本社内のワイナリー担当事務職に指名された。醸造所は21年2月に完成、ショップは翌年4月末に開業。初の大型連休は目の回るような忙しさだった。事務職でありながら店頭対応もしてきたが、畑違いの業務もある。

 ブドウのサンプル採取。収穫時期の参考となる酸度や糖度などの数値を出すために採るのだが、その数はほ場1カ所で100粒。房の上下、左右、日当たりが良い部位と陰になりがちな部位を均等に採らねばならない。ほ場は県内5市町(香美、香南、南国、佐川、梼原)にあり、初めての21年夏は3市の10カ所、22年夏は12カ所すべてが収穫期になるまで2カ月、毎週通った。

 大敵は日差しと暑さ。麦わら帽子に長袖、ビニール手袋が必須だ。房の雨よけカバーや食害予防ネットの内側に、大嫌いな虫やカタツムリがいませんようにと念じながら、ひたすらブドウを摘んだ。採取後は醸造所の分析室にこもる。果実をつぶして果汁にし、測定用の液体を1滴ずつ垂らす。規定値に達するまでの使用量を量り、算式に入れ醸造部門に提出する。自分の出した数値で収穫時期が決まり、ワインの出来にも影響する。畑に行ったからこそ責任を実感できた。

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好きな言葉

好きな言葉

 「やってみたいのはワインの入門編イベント。いろいろな銘柄と食材を提供し、飲み比べてもらうんです」。自分はかなわなかったすてきなワインデビューをと、ポップ広告で新成人に薦めていたのはピンクのロゼ。辛口でフルーティー、後味はスパイシー。1本約1800円と、つまみを合わせても気軽に買える値段のものにした。

 ワイン以外の商品は「できれば県内産で」と、梼原町産の鹿肉の缶詰や高知市の鮮魚店とコラボしたかつおコンフィなどを並べる。チーズケーキや香南市産レーズン入りショコラは、地元ケーキ店と試作や試食を重ね共同開発。「ワインで高知を元気に」というワイナリーの理念を実践中だ。

 仕事で楽しいのは「貸借が合った時」。きちょうめんな会計担当らしいが、来月末には開店初年度の売り上げが確定する。応援する俳優・神木隆之介さん主演のNHK連続テレビ小説「らんまん」が始まる頃だ。「神木さんなら(プライベートでも)高知にふらっと来そう」と夢見つつ、「朝ドラって経済効果どのくらいあるんでしょうね?」。そろばんもはじいている。

 写真・飯野浩和
 文 ・藤枝武志

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