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2023.02.01 08:00

【政変から2年】民政ミャンマーへ対話を

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 ミャンマーは国軍のクーデターから1日で2年を迎えた。民主化を望む市民らへの弾圧は続き、混乱の収束は見通せない。国軍は選挙で示された国民の意思と向き合い、対話による民政復帰を図るべきだ。
 国軍は2020年の総選挙で不正があったとして政権を覆した。国軍トップのミンアウンフライン総司令官は支配の正統性を主張し続け、民主派排除の姿勢を崩していない。
 市民は抗議デモや職務を放棄する「不服従運動」を展開してきた。国軍は非武装の民間人に武力を行使し、人権団体のまとめで死者は2900人を超えた。1万4千人近くが今も拘束されている。
 民主派でつくる挙国一致政府(NUG)の呼びかけで創設された国民防衛隊は、自治権拡大を求めてきた少数民族武装勢力とも共闘しながら国軍に抵抗している。武力闘争が続けば被害の拡大は避けられない。双方が暴力を停止する必要がある。
 クーデター後は、経済的苦境や将来展望が描けずに精神疾患や自殺者も増加していると伝えられる。戦闘により住まいを失った国内避難民は増加傾向で、150万人を超えたとみられる。国軍からの脱走兵も増えているようだ。混乱を長引かせては国民生活は疲弊が強まる。
 国家顧問兼外相だったアウンサンスーチー氏はクーデター直後に拘束され、汚職や国家機密漏えいなどの罪に問われた。すべてに有罪の判決が下され、刑期は計33年に達する。国軍統制下での非公開の裁判では公正性が維持されるはずがない。スーチー氏排除は徹底している。
 ことし8月までに総選挙が実施される予定だ。親軍政権を樹立し、総司令官は選挙後の大統領就任を狙っているとみられる。
 国軍系政党は、先の総選挙でスーチー氏が率いた国民民主連盟(NLD)に大敗している。このため国軍支配下の政府は、選挙制度面からも民主派の完全排除を進める。
 全国規模で活動する政党に対し、選挙区の半数以上に候補を擁立することを義務付ける新法を制定した。NLD関係者らは身柄を拘束されるか、国外に逃亡しているため擁立は困難とみられる。NLDの存続が認められなくなりそうだ。
 国際社会によるスーチー氏解放への圧力は強い。国連安全保障理事会は解放を求める決議を採択した。こうしたことから、スーチー氏を収監した刑務所から自宅軟禁に戻すとする見方も浮上している。
 東南アジア諸国連合(ASEAN)などとの関係改善をもくろんでいるのだろう。だが、暴力の停止や解決に向けた対話などASEANと合意した5項目は履行していない。国軍は抵抗や新型コロナウイルス感染拡大を理由とするが、対話の姿勢を欠いては問題解決は遠のく。
 ASEANはミャンマーへの対応を巡り分断も表面化しているが、収拾へさらなる関与が期待される。日本からの働きかけも重要だ。これまでに築いた関係を生かして効果のある対策へとつなげたい。

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