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2023.01.31 08:20

後部座席のシートベルトって面倒? 九州は着用率低迷…知らない・誤解・罰則ない【なるほど!こうち取材班 パートナー紙とともに】

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 車の後ろの席でシートベルトをちゃんと着けていますか? 義務化から15年、一般道路での後部座席のベルト着用率が低迷している。警察庁と日本自動車連盟(JAF)の合同調査によると、2021年の平均着用率は42・9%。このうち、福岡県が全国ワースト3位、佐賀県が同2位となるなど九州は意識の低さが目立つ。なぜ、命に関わるリスクとなり得るのに、改善されないのか。西日本新聞「あなたの特命取材班」が考えてみた。

シートベルト着用状況全国調査の調査地点となっている福岡市・天神の交差点(画像の一部を加工しています)

シートベルト着用状況全国調査の調査地点となっている福岡市・天神の交差点(画像の一部を加工しています)

 昨年12月の平日午後。取材班は福岡市・天神の交差点で、後部座席のシートベルト着用状況を調べた。黒いスモークガラスで車内が見えにくい車が多い。歩道から目視で確認できた100台のうち、着用していたのは15台だった。

 警察庁とJAFの調査も目視で行っている。21年、福岡県では一般道19カ所で計1500人を調べ、着用率は27・5%だった。都道府県別では沖縄、佐賀に次ぐ低さ。福岡県警もチラシを配るなどして後部シートベルト着用を啓発しているものの、着用率が低い要因は明らかになっていない。

 概して東日本の方が西日本よりも高く、最高は群馬の65・7%。JAF群馬支部に聞くと、やはり「日頃から啓発活動には取り組んでいるが、(1位の)要因は分からない」と話す。

 道路交通法改正により、全ての道路で座席の前後を問わず、シートベルト着用が義務化されたのは08年のこと。近年の調査では、高速道での着用率が7割を超える一方、一般道は4割程度にとどまる。この差について、JAF福岡支部は「罰則の有無が要因では」とみる。後部座席のベルト未着用は高速道では減点の対象になるが、一般道では罰則がないためだ。

■着けない“言い分”
 取材班は昨年12月、無料通信アプリLINE(ライン)でつながる「あな特通信員」にアンケートを実施。回答した約650人のうち、一般道を含む全ての道路で後部座席のベルト着用の義務があることを、25・5%が「知らなかった」とした。周知が十分でないことはうかがえたが、地域間での差はなかった。

 一般道で「必ず着用を呼びかける/着用する」と回答した人は、49歳以下の53・8%に対して、50代以上は44・3%とやや低い。

 「着用を呼びかけない/着用しない」の割合は女性28・3%で、男性32・2%。概して若年層より中高年層が、女性よりも男性が、シートベルト着用に消極的な傾向が見られる。

 着用義務を知りながら「着用しない」人は、全体の14・4%。その言い分には「面倒」「わずらわしい」といった言葉が目立つ。「(着けないことが)習慣」、「摘発されたことがない」など違反の認識が薄い人もおり、「(同乗者に)お願いするのは気が引ける」との声もあった。

 警察庁によると、後部座席でシートベルトをしていない人が事故で死亡する確率は、一般道でも着用時と比べて3・5倍高い。JAFが公開している動画では、車が時速55キロで壁に衝突すると、シートベルト非着用の後部座席の人形は前方に強く投げ出される。運転席のヘッドレストなどを押しつぶし、前席の人の頭部に致命傷を与えることもあるとされる。「体重が軽い子どもや高齢者はさらに危険。一般道での着用を徹底して」と、JAF福岡支部は呼びかけている。(西日本新聞)

高知は着用率28位 横断歩道停止率も課題 県警「命守る対策を」
 九州では後部座席でのシートベルト着用率の低迷が課題のようだが、高知の交通マナーはどうなのか。警察庁や日本自動車連盟(JAF)の調査を基に、本県の現状を本紙「なるほど! こうち取材班」(なるこ取材班)が調べた。

 一般道での後部座席のシートベルト着用率は、2018年調査では32・7%(35位)、19年は32・6%(37位)と全国平均を5~6ポイント下回っていた。21年は40・4%と改善したものの、全国平均(42・9%)を下回る28位だった。

 高知県警によると、22年に四輪車に乗っていた交通事故死亡者は8人で、シートベルト未着用は6人。このうち4人は、シートベルトをしていれば命が助かった可能性があるという。

 県警交通企画課の島崎高頼・交通管理調査官は「『後部座席はシートベルトをしなくても大丈夫』と思う人がいるかもしれないが、事故で受ける衝撃は座席が前でも後ろでも一緒。万が一に備え、命を守る対策を」と呼び掛ける。

 残念なのは、信号のない横断歩道で歩行者が渡ろうとしたときの停止率だ。18年の4・2%(36位)から年々改善しており、22年は32・9%(30位)。しかし、過去5年間で全国平均を上回ったことはない。

 そもそも信号機のない交差点で歩行者が横断歩道を渡ろうとしている場合、車は一時停止の義務がある。ちなみに、毎年1位を堅持しているのが長野県。群を抜いて停止率が高く、全国平均が8・6%しかなかった18年時点で58・6%、22年は82・9%に上る。

 高知県警は、長野など停止率が高い地域の取り組みを参考に、21年から「あいさつ県民運動」を展開している。道を横断する歩行者に「手を上げて渡る」「停止してくれた車におじぎなどのあいさつをする」といった行動を促すもので、学校や高齢者対象の交通安全教室などで啓発を進める。

 歩行者優先が前提ではあるが、歩行者側が一時停止に感謝を示すことで、ドライバーが喜びを感じ「次も止まろう」と考える“ポジティブな循環”をつくることが狙いだという。

 こうした交通マナーの向上策のほか、さまざまな技術向上や取り締まりなどにより、県内の事故件数は近年減少傾向が続いている。

 県警によると、22年の県内の交通事故死者は26人で、統計が残る1952年以降で最少の21年(25人)とほぼ横ばい。人身事故件数も減少傾向が続き、22年は943件で68年ぶりに3桁台になった。ただ、人口10万人当たりの死者数は3・80人で、全国(2・08人)で3番目に高い水準だ。

 島崎さんは「後部座席のシートベルト着用率、横断歩道の停止率ともに向上はしているが、まだ確実に浸透しているとは言いがたい。これからも浸透に向け努めていく」と話した。(森田千尋)


 県民・読者の情報提供に基づいて取材する「なるほど!こうち取材班」(略称=なるこ取材班)は、同様の調査報道に取り組む全国の地方紙と、記事交換などをするパートナー協定を結んでいます。各紙の記事を随時掲載します。

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