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2023.01.29 08:35

孤立するお母さん助けたい「えんぴつとフォーク」経営の畠山さん―ちいきのおと(106)愛宕町1丁目(高知市)

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放課後に店の2階に集まり、スタッフと宿題に取り組む子どもたち(写真はいずれも高知市愛宕町1丁目の「えんぴつとフォーク」)

放課後に店の2階に集まり、スタッフと宿題に取り組む子どもたち(写真はいずれも高知市愛宕町1丁目の「えんぴつとフォーク」)

 高知市の愛宕商店街に、カフェと民間児童クラブを兼ねる「えんぴつとフォーク」という店がある。昼は地域の住民や会社員らがランチを楽しみ、夕方になると小学生が訪れる。「おかえり~」。店を経営する畠山加奈さん(44)が子どもたちを温かく出迎えた。

1階カフェ、2階は児童クラブ
 「ちゃんと宿題やりゆう?」。畠山さんが子どもたちの様子を見に行くと、計算ドリルと格闘していた男の子が「全然終わら~ん」と表情を曇らせた。畠山さんはそばに行き、かけ算の問題を指でなぞる。「OK、合っちゅう」と褒めると男の子は笑みを浮かべて再びえんぴつを走らせた。

 店は2021年6月にオープン。1階のカフェ(午前11時~午後6時)は少し絞った照明の下、ジャズが流れる。季節の野菜を使った日替わりランチ、ペンネグラタン、キーマカレーなどに加え、ケーキやサブレなどデザートも豊富だ。

タルトやシュークリームなども並び、昼頃になると続々と客が訪れる

タルトやシュークリームなども並び、昼頃になると続々と客が訪れる

 2階は小学1~4年を対象にした児童クラブ。平日の午後2~6時に付属小と江ノ口小の児童6人が利用しており、1日に2、3人が訪れる。利用料は月額1万3千円。保育士や児童指導員の資格を持つスタッフが常駐し、算数や漢字の読み書きなども教える。

 ◇ 

 畠山さんは、10代の時から居酒屋やバーで夜間に働き、10年ほど前からは同市中心部でバーを営む。

 そこには、幼い子どもを家に置き、夜の仕事に奮闘する母親たちの姿があった。夜間保育所もあるが、料金が高く利用できない人がいた。周囲に相談できず、一人で悩む人もいた。「お母さんたちを助けたくて店を始めたんです」

 夜間に働く人が、安心して子どもを預けられる場所を自らつくろうと、19年に決意。保育士の資格を取るため、バーの営業が終わった午前3時ごろから毎日勉強し、ピアノのレッスンにも通った。筆記と実技の国家試験に一発合格。1年で保育士の免許を取ることができた。1階をカフェにした理由は児童クラブの経営を支えるためだ。

 知人に声を掛け、今は児童指導員の資格を持つ4人で店を切り盛り。畠山さんは「慣れてきたら、夜間でも預かれる場所を繁華街の近くに新たにつくりたい」と意気込む。

 ◇ 

月に数度、店で行われるクッキー作り。畠山加奈さんが優しく教える

月に数度、店で行われるクッキー作り。畠山加奈さんが優しく教える

 1月下旬の児童クラブ。1階のカフェで月に数度のクッキー作りが行われ、子どもたちは「20個もできた」と大喜び。付属小1年の長崎樹季さん(6)は「一緒に宿題したり絵を描いたり。優しい“先生”ばかりでみんな大好き」とほほ笑む。

 クラブに通う同小3年の島崎寧々(ねね)さん(9)の母、真由さん(36)は「少人数なので一人一人しっかり向き合ってもらえる。勉強やクッキー作りも教えてくれるのでありがたいです」。

 子どもたちは両親や祖父母にプレゼントするため、クッキーをラッピングして袋に似顔絵を描いた。その様子を見て、畠山さんが言う。

 「家族や他人を思いやる気持ちを大人になっても大事にしてほしい。ここがお母さんたちの力になり、子どもの成長の場につながればうれしいです」(報道部・乙井康弘)


《ちょっとチャット》
南 維佐南(いさな)君(7)付属小2年
 家の近くにあるパン屋さんやお肉屋さん、八百屋さんに、お母さんとよく行きます。買ってきた材料でお母さんと一緒に料理するのが楽しいです。1人で春雨サラダが作れるようになりました。江ノ口コミュニティセンターにもよく出かけ、料理の本を借りて読んでいます。将来は料理人になりたいです。



 愛宕町1丁目は、もとは土佐郡江ノ口村の一部で1936年に現在の町名となった。JR土讃線の高架が1丁目と2丁目の境を通り、沿道では毎週金曜日に「金曜市」が立つ。1月1日現在、211世帯285人。ちなみに1965年時点は249世帯で788人だった。

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