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2023.01.21 08:39

新型コロナ5類、高知県内期待と不安 経済界「一刻も早く移行を」 医療現場「まん延リスク増」

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観光客でにぎわう日曜市と、逼迫する医療現場(近森病院提供)のコラージュ。5類移行へ期待と不安が交錯する=松本康裕作成

観光客でにぎわう日曜市と、逼迫する医療現場(近森病院提供)のコラージュ。5類移行へ期待と不安が交錯する=松本康裕作成

 岸田文雄首相が新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを今春から「5類」に引き下げることを表明した20日、県内経済界からは「ありがたい」「一刻も早くコロナ前の社会に」と期待の声が上がった。一方で、感染「第8波」の拡大で逼迫(ひっぱく)が続く医療現場からは「制限緩和で感染が拡大し、医療従事者が今まで以上の対応を迫られる恐れがある」と不安の声が漏れた。

「外食伸びるはず」
 「(移行は)非常にありがたい」。そう歓迎したのは三翠園(高知市鷹匠町1丁目)の中沢清一社長。宿泊客はほぼコロナ禍前に戻りつつあるが、企業の宴会がすっかり減り、この年末年始の忘年会や新年会は従前の4分の1程度に。「5類になれば自粛ムードも薄れ、4月には歓迎会などの宴会も期待できる」と意気込む。

 さらに出入国の水際対策がなくなればインバウンド(訪日客)の回復も望めるとし、「コロナ禍前は年間約2千人の訪日客があったが、現在は年間数十人。従業員向けの外国語勉強会を開いて接客準備を整えたい」と声を弾ませた。

 外食の増加による波及効果を見込むのはJA高知県。野菜販売1課によると、外食向けの出荷が多いシシトウや大葉はコロナ下で需要が減り、単価は最大で半値ほどに落ち込んだ。

 行動制限の緩和で段階的に回復しているものの、「重油や資材の高騰で農家の経費は跳ね上がっている。5類移行で外食需要も伸びるはず」と西内正裕課長。「既に(全国旅行支援などで)人の行き来も盛んになっている。4月と言わず、一刻も早く5類へ移行を」と懇願した。

「社会の緩み怖い」
 医師で県感染症対策協議会の吉川(きっかわ)清志会長=土佐希望の家医療福祉センター長=は「医師の中でも賛否あるだろうが、社会経済活動とのバランスを考えると移行は妥当な判断だと思う。ワクチンも治療薬もできた。どこかで政治的判断をする必要があった」と話す。

 5類への移行によって、これまでコロナ対応をしていなかった県内医療機関が、季節性インフルエンザのように患者を受け入れることが可能になる。

 吉川医師は「どこもクラスターを心配しているので、対応する医療機関はすぐには増えない」と予測。マスク着用については「完全にゼロにして外すのはやめた方がいい。人が集まる場所や室内で会話する時などは着けた方がいい」と県民に呼びかけた。

 5類への移行後、医療費や任意接種となるワクチンへの公費負担がどこまで継続されるのか国は明らかにしておらず、吉川医師は「医療費やワクチンが自己負担になると受診控えにつながる可能性がある」と危惧した。

 かねて県内経済の回復を重視し、5類相当に見直すことを国に提言してきた浜田省司知事は、「5類移行は正しい方向性だと思う」と首相の判断を評価しつつ、「公費負担に関しては経過措置として段階的に移行していくのが適当ではないか。今後、新たな変異株が出現した場合などに柔軟に対応できる枠組みも必要だ」と述べた。

 一方、県医師会の伊与木増喜常任理事=土佐市蓮池の「伊与木クリニック」院長=は「5類移行でみんなの気持ちが緩むのが怖い」と強調。「社会経済活動が活発になることで若者にはメリットがあるが、今まで以上にまん延のリスクが高まり、重症化しやすい高齢者にメリットはない」と指摘した。

 発熱外来でコロナ患者を日々診察している伊与木医師。「5類になったからといって、高齢者や基礎疾患のあるハイリスク患者への対応は変わらない。感染が拡大することで医療従事者が今まで以上の対応を迫られる可能性もある。楽になるとは思っていない」と不安を口にした。(報道部取材班)

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