2023.01.12 08:49
山北ミカン、高知県外への出荷割合が増加! 10年で3倍、単価も上昇 価格下落の危機から流通見直し
JA高知県香美地区によると、同地区果樹部露地みかん部会では186戸が165ヘクタールで温州ミカンを栽培。例年約3千トンを収穫している。ただ、そのほとんどは県内で流通しており、大産地の和歌山県や愛媛県と比べると全国的な知名度は高くない。
トラックで関東、関西へと運ばれる山北ミカン(香南市のJA高知県香美地区山北果樹集出荷場)
転機は2014年。表年で豊作になったものの量がはけず価格も下落したため、農家が大量にミカンを廃棄する事態となり、JAは県内頼りだった流通を見直した。同時期に東京の大規模な市場のバイヤーから「ネットサイトで山北ミカンを扱いたい」との打診があり、消費者向けに小ロットで売れるチャンスが広がったという。
その後は大阪の市場からも引き合いがあり、近年は関東、関西の百貨店向けにも出荷されるなど、高級品として徐々に認知されだした。市場関係者はシンガポールへの輸出にも取り組んでいる。販路拡大に伴い、1キロ当たりの単価も上昇しており、12年の196円が21年は313円。都心では500円の値が付くこともあるという。
山北果樹集出荷場の藤本和弘課長(46)は「豊作時に下がる値段を下がり過ぎずに終わらせられる」と価格安定のメリットを強調。農家の高齢化などから生産、出荷量には限度があるとしながら「味を気に入ってくれるバイヤーは多い。全国的に有名にするというよりは、知る人ぞ知る玄人好みのミカンに育てたい」と話している。(深田恵衣)