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2023.01.10 10:43

【東京舞台さんぽ】「江戸名所図会」 麻布十番、往時のにぎわい求めて

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 善福寺の本堂=東京都港区

 江戸とその近郊の名所を、長谷川雪旦の挿絵入りで紹介した地誌「江戸名所図会」。東京・麻布十番(港区)は「麻布一本松」や「麻布善福寺」の図に、人々のにぎわいや古刹の境内が描かれた街だ。往時の面影を求め、訪ねた。(共同通信=藤原朋子)


 都営地下鉄大江戸線の麻布十番駅から暗闇坂を上がり、名木「一本松」を目指した。図では趣あるマツのそばで、牛車が俵物をたくさん運んでいる。「牛車は江戸時代、重要な輸送手段の一つでした。坂を上がる牛車を見せ場とし、雪旦はかいわいの活気を伝えたかったのではないか」。港区立郷土歴史館の学芸員・石田七奈子さんは考える。


 939年に源経基が立ち寄り、冠や装束をここのマツに掛けたなど、いくつかの伝承が残る地。現在のマツは戦後に地域住民が植えたそうだ。今は閑静な住宅地だが、少し歩けば図のような活気を味わえる。


 大黒坂を下り、善福寺へ向かった。広い敷地の中門をくぐると、本堂が目の前に現れる。現在の本堂は戦後に大阪府の東本願寺八尾別院大信寺から移築したもの。「麻布善福寺」に登場する建築とは異なる。「この図は鳥瞰して描かれています。隣接する寺院や武家屋敷を雲で隠すことで、境内の建物配置や見どころが分かりやすくなっています」と石田さん。


 図では本堂に向かって左手に「杖銀杏」が描かれた。現在も同じ位置に巨木がそびえる。天を仰ぐかのような枝ぶりに圧倒された。推定樹齢約800年で国の天然記念物に指定された都内最古のイチョウだ。


 創建は平安時代。幕末には最初の米国公使館として使われた。境内には日米修好通商条約に調印した外交官タウンゼント・ハリスの記念碑が立つ。福沢諭吉も善福寺に出入りしていたとされ、寺の墓所に眠っている。


 【メモ】童謡「赤い靴」のモデルは明治時代に米国人宣教師の養女となった「きみちゃん」と言われる。近くの施設で亡くなったことから、大黒坂の下の広場に「きみちゃん像」が立つ。

(c)KYODONEWS

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