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2023.01.09 08:36

村の魅力、多彩に発信 地域おこし協力隊員 大沼花依さん(24)大川村―ただ今修業中

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「人は少ないけど、流れている空気は温かい」と村の魅力を語る大沼花依さん(大川村小松の早明浦ダム湖前)

「人は少ないけど、流れている空気は温かい」と村の魅力を語る大沼花依さん(大川村小松の早明浦ダム湖前)


 「昔はこんな山奥にも小学校があったんですよ。毎日の通学も登山って感じですよね」

 昨年8月中旬の大川村。日差しがふっと影を潜める山中で、村外から訪れた家族連れらをガイドする姿があった。2021年6月に地域おこし協力隊員として村に着任して以来、観光イベント企画や情報発信、芸術振興を担当。「仕事がめっちゃあって大変。でも、やりがいしかないです」。元気よく笑った。
 
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 仙台市出身。中学まではプロスイマーを目指して水泳に打ち込んだ。高校では「全然違うことをやろう」とミュージカル部へ。「歌や芝居で人の心を動かす」魅力にはまり、演劇を学べる東京の短期大学に進んだ。2年間、歴史や発声法など演劇を基礎から学びつつ、年2回ほどの公演に向けて稽古漬けの毎日だった。

 卒業後は、在学中から気になっていた台湾の演劇を知ろうと渡航。現地の人たちとシェアハウスで暮らしながら劇を鑑賞し、稽古場を訪ねた。「台湾の劇団と日本の劇団が交流できる機会をつくりたい」との思いが芽生えた。

 ただ、帰国後のビジョンは白紙。「就活サイトと同じノリで」登録した地域おこし協力隊員の募集サイトを通して、大川村から声がかかった。「地方に行きたいっていう思いもあったし、父親から『高知は面白い』って聞いてたから」と移住を決意。車の運転中に遭遇したイノシシにカルチャーショックを受けつつ、ご飯を振る舞ってもてなしてくれる村民の温かさに、日々感動している。
 
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好きな言葉

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 協力隊員として赴任して約1年半。観光イベントでは、クイズに答えながら集落を巡る謎解きツアーなどを企画し、ツイッターやフェイスブックなどの交流サイト(SNS)を使った村の情報発信にも力を入れる。写真はデジタル一眼レフカメラやスマートフォンで撮影し、文章は中国語に翻訳したものも合わせて掲載。その効果か、ここ1年ほどで台湾や中国からの閲覧者も増えてきた。

 昨年6月、早明浦ダム湖に姿を見せた旧村役場の写真をSNSに投稿すると大きな反響があった。写真を見たテレビ局がヘリコプターで村を訪れ、県内外の人々が殺到。「こんなに村に人が来るなんて謝肉祭くらい。村が注目されるきっかけをつくれた」と喜びつつ、「一つの発信が及ぼす影響の大きさに怖さを感じた」とも。発信者としての責任も自覚した。

 もどかしさも感じている。採用時に期待された芸術振興の仕事が、新型コロナウイルスの影響で進まなかったからだ。

 「ここでは芸術に触れる機会がとても少ない。だからこそ、子どもたちには素晴らしい表現をもっと見てもらいたい」。その思いは強く、今年は「芸術の仕事に一心」ときっぱり。今月21日にはプロダンサーを集めたダンスショーを開催するほか、自身の人脈で劇団を招いての公演も企画している。

 海外からの観光客増加にも力を入れる。今年は中国からのモニターツアーも来る予定といい、「謎解きツアーも海外向けにアレンジしたい。田舎体験みたいな形でPRできればいいな」。任期はあと1年半。村の魅力アップに注ぐ情熱とアイデアは、まだ尽きない。

  写真・山下正晃
   文・谷沢丈流

高知のニュース 大川村 ただ今修業中 ひと・人物

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