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2023.01.08 08:38

昭和のまま、こだわりの音 自作スピーカーでファン魅了 音楽喫茶「散歩」―ちいきのおと(103)西町(須崎市)

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自作したスピーカーを前に「もっと音をよくしたい」と話す山崎剛志さん。自身が内装を手掛けた店内はほぼ開店当時のままという(写真はいずれも須崎市西町1丁目の音楽喫茶「散歩」)

自作したスピーカーを前に「もっと音をよくしたい」と話す山崎剛志さん。自身が内装を手掛けた店内はほぼ開店当時のままという(写真はいずれも須崎市西町1丁目の音楽喫茶「散歩」)


 須崎市西町1丁目。昔ながらのなまこ壁が点在するお大師通りから南の路地に入ると、小さな音楽喫茶「散歩」がある。開店から半世紀近くが過ぎた今も、昭和の風情そのままの空間に店主こだわりの音が流れている。

 「散歩がてらに寄ってほしいと思い、この名前にしました」。マスターの山崎剛志さん(73)が柔らかな口調で話す。

路地裏にたたずむ店舗外観

路地裏にたたずむ店舗外観


 須崎工業高校を卒業後、大工だった父の見習いを経て高知市の中華料理店へ。調理の仕事をしながら、ジャズ喫茶に入り浸った。その後高松市のレストランに転職したが26歳で帰郷。地元になかった音楽喫茶をやろうと思い立ち、1975年に開業した。

 ボックス席五つの小さな路地裏の店は「すぐつぶれる」とうわさされたが、どっこい「ええ音が聴ける」と客が入り始めた。近くの家電量販店でオーディオを担当していた店員も常連になり、客を流してくれた。須崎高校の生徒もたくさん訪れ「みんな青春しよった」(山崎さん)。

年代物のオープンリールデッキも健在

年代物のオープンリールデッキも健在


 店内にはオンキヨー、SANSUI、トリオなど時代を彩ったブランドのアンプやプレーヤー、オープンリールデッキなどが所狭しと並ぶ。中でも目立つ高さ1メートルほどのメインスピーカーは、“大工経験”を生かした山崎さんの自作品。「いろんなメーカーのスピーカーを購入したけど愛着が湧かず気に入らなかった。本を見ながら7、8年かけて店に合うものを作り上げた」という。

 そんなこだわりが多くの音楽好きを引き寄せてきたが、先の家電店はなくなり、須崎高も2019年に須崎工高と統合されて校舎は遠のいた。モーニングや昼食目当ての地元客はいるものの、今は音楽よりテレビというムードも漂う。

 それでも、月に1、2人は評判を聞いた遠来の客が訪れ、オーディオ談議に花を咲かせる。かつての常連が懐かしい顔を見せることも。「『まだやりゆう!』と喜んでくれるのはうれしいね」。音響機器だけでなく、レトロなランプシェードやピンクの電話、テーブル型のゲーム機も往時のままだ。

オープン当時から使うランプシェード

オープン当時から使うランプシェード

昭和を感じさせるピンクの電話

昭和を感じさせるピンクの電話


 「これまでつぎ込んだ金額は恐ろしくてよう計算せん」。山崎さんがそう苦笑する機器の実力を知りたくて、ある昼下がり、筆者はCDを持ち込んだ。イエローマジックオーケストラのライブアルバム「パブリックプレッシャー」。山崎さんが普段よりボリュームを上げる。と、店内いっぱいに迫力ある音が響き渡った。長年ヘッドホンで聴いてきた音楽とは思えない臨場感。「ずっと聴いていたいやろ? スマホ世代にもこの音は聴いてほしい」と、山崎さんは笑った。

 散歩の営業は午前6時から午後2時ごろまで。木曜定休。(須崎支局・富尾和方)


《ちょっとチャット》
山下京将さん(14)須崎中2年
 生まれも育ちも西町。誰もがあいさつしてくれる触れ合いの多い町です。地元の祭りの竜踊りには曽祖父の代から参加していて、自分も小学1年の時からメンバーです。コロナ禍のため3年連続で祭りが中止になっているので今年こそは開催してほしい。やはりこの祭りがないと地域が盛り上がりません。



 西町は新荘川河口北側に位置。JR土讃線、県道388号が通る住宅密集地で、1、2丁目がある。新荘村、須崎町を経て1954年に須崎市の一部となった。毎年8月19日に大師祭が開かれ、56年から続く竜踊りでにぎわう。2022年11月末現在、261世帯467人。

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