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2023.01.07 08:47

カツオ減少「歯止めが精いっぱい」…資源回復策は示せず 水産庁交渉団・福田工参事官に聞く

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「特にカツオの交渉では日本は孤立する」と話す水産庁の福田工参事官(高知新聞社)

「特にカツオの交渉では日本は孤立する」と話す水産庁の福田工参事官(高知新聞社)

 太平洋のカツオ漁に昨年、資源管理ルールを導入した「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」は26の国・地域で構成される。日本を除く大多数は漁規制を嫌う立場。新たに合意した枠組みは熱帯域の乱獲防止につながるのか。政府代表団のナンバー2として交渉に臨んだ水産庁資源管理部の福田工・参事官は、本紙のインタビューに「今回は資源下落に歯止めをかけるので精いっぱいだった」とし、各国の利害が衝突するルール作りの難しさをにじませた。

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 ―新ルールは、漁業がない状態を資源量100%と仮定し、40~57%の幅で維持する。この評価を。

 「2004年のWCPFC発足から、カツオ資源の下落傾向は止まらなかったが、中長期的ルールができた。歯止めをかける意味で前進だ」

 ―近海一本釣り漁業者は資源量が上向くルールを期待していた。

 「今回は現状維持だ」

 ―そうは受け取れない。漁獲規制が掛かるラインの40%に対し、直近の資源量は54%との評価だ。資源減少を許す合意と映る。

 「そう言われればそうかもしれない。だが資源評価そのものが毎回変化する。18年は42%、21年は47%だった。科学的な資源評価にはまだぶれがあり、正直、来年が何%になるか分からない。維持すべき資源量に幅を持たせないと、他国との合意もできない」

 ―高知県は「管理目標値を60%に」と、より厳しい管理を提言してきた。

 「60%は現実的ではない。達成するなら、熱帯域の巻き網操業日数を半分に減らさないといけない。カツオ漁獲量の9割を占める島しょ国の海域に対し、数%を漁獲する日本の近海で釣れないからといって大幅に規制するのは難しい。日本と島しょ国の代表で何回も会談したが、相手は入漁料が国家収入の基礎だ。『2割減れば、学校の費用が2割減る』とまで言ってくる」

 ―近海漁業の展望をどう描くのか。

 「カツオがじり貧になる流れをまず止めたい。資源が下落している状況では先も見えない。ある程度、資源が維持される見通しがあることで経営ビジョンが出てくると思う」

 ―現状は資源の状態を好転させる交渉ではない?

 「資源回復のビジョンを示せるところまではいっていない。資源の下落に歯止めをかけるのが精いっぱいだ。資源量が落ち込んだので元に戻してくれと言われるが、今回の合意は『よくて歯止め』が現実的な落としどころだった」

 ―合意は難しいのか。

 「1週間でルールを決めなければいけない。特にカツオの交渉では日本は孤立する。主張を先鋭化させて他の魚種の交渉をつぶすわけにもいかない」

 ―他魚種? 次期の交渉でクロマグロ漁の増枠を狙うため、カツオ規制を強く主張できないように聞こえる。

 「交渉は中期的に見る。当然、相手国はクロマグロを考えてくる。『日本はカツオの規制を求めながら、資源量が少ないクロマグロは増枠なんてふざけるな』『日本にとって重要なクロマグロの増枠を求めるのなら、俺たちにとって重要なカツオをなぜ規制しろと言うんだ』と。だまし合い、ばかし合いも当然ある。どのメンバーも二枚舌。それも含めて交渉だ」(聞き手=八田大輔)



 ふくだ・たくみ 奈良県出身。九州大卒。1992年水産庁入り。漁業調整課や国際課などを経て2018年から太平洋のカツオ、マグロ漁に関する国際交渉を担当。22年から現職。

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