2023.01.07 08:00
【ことしの県政】高い満足度に緩まぬよう
秋に予定される知事選に対し、正式な出馬表明はまだだが、2期目挑戦は既定路線だろう。1期4年の成果を整理し、問う1年になる。
もっとも、浜田県政の「県勢浮揚に向けた成果」と言われて、すぐに代表的な事例が思いつく県民は少ないのではないか。
初当選時は尾﨑県政の「後継」を掲げ、産業振興計画などを踏襲、発展させるはずだった。しかし、就任後ほどなく、新型コロナウイルスの流行に見舞われ、感染症対応が最優先になった。経済活性化や医療・福祉などの政策展開は、それまでの前提や土台が崩れてしまった。
浜田カラーの象徴とも言える関西戦略も依然、仕込みの段階だ。
それでも、本紙が昨年12月に行った県政世論調査では、県政の満足度は76・1%に上った。一昨年10月の調査に続いて高水準だった。
確かにコロナ対応は、発信力不足などの批判を受けつつも、そつがなかった。その対応力が評価されたのだろう。だが、高知県の抱える構造的な課題に前進が見えにくく、率直に、過剰評価の印象を免れない。
重なるのは、岸田内閣初期の支持率だ。功罪の「功」はないが「罪」もない状況が肯定的な世論になった。浜田知事も失点は少ない。だとすれば、高い満足度は意外ともろいかもしれない。緩むことなく県政に当たってもらいたい。
県政は今年も人口減少対策が最大のテーマになろう。県人口は昨年、68万人を割り、減少ペースは加速している。特に中山間地域は深刻だ。集落実態調査でも限界が近づいている状況が浮き彫りになった。
県は新たに、中山間地域の「再興ビジョン」を作るとする。現状は手詰まり感もある。実効性のある取り組みを打ち出せるだろうか。
県経済の成長では、生産性向上や距離の壁を克服する「デジタル化」、脱炭素社会に向けた「グリーン化」が引き続き重要だ。浜田知事も柱とし、布石を打っている。具体化を急いでもらいたい。
ウィズコロナ社会への適応も求められる。コロナで地方移住への関心は高まった。追い風に実績を上げたい。観光は明るい材料だ。行動制限がなくなる中、NHK連続テレビ小説「らんまん」が始まる。一過性の盛り上がりでなく、構造的に県益を生む仕組みづくりが重要になる。
福祉分野では新たに、ヤングケアラーへの対応を迫られ始めた。南海トラフ地震対策は、東日本大震災で高まった県民の危機感が薄れており、対処が課題になる。
県内は今年、知事選のほか、統一地方選、高知市長選など選挙ラッシュの年となる。選挙は地域を見つめ直す好機だ。漫然と終わらせてはいけない。投票率の低落傾向も顕著だ。政治を志す側は、住民との距離を縮めることにも留意してほしい。