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2022.12.24 05:00

【23年度予算案】防衛への傾斜が際立つ

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 予算の規模が膨らむと、財政規律にも注意を払わなければならない。数多い課題といかに向き合っていくのか。厳しい財政運営が続く中、国会は政策の必要性や効果を監視し、ただす責務がある。
 国の2023年度当初予算案は一般会計の歳出総額が114兆3812億円となった。22年度から6兆円以上増えた。11年連続で過去最大を更新し100兆円超えは5年連続となる。
 防衛力を抜本強化する計画の初年度に当たり、防衛費は米軍再編経費を含め約6兆8千億円を計上した。22年度当初予算の1・2倍超に急増する。岸田文雄首相は防衛費を23年度からの5年で総額43兆円に増やすと表明した。19~23年度の1・5倍を超える異例の増額となる。
 27年度以降に必要となる追加財源のうち、1兆円は増税での確保をもくろむ。政府、与党は防衛費増額へ法人、所得、たばこの3税の増税方針を決めた。しかし、実施時期の決定は先送りし、財源の裏付けは不明確なままだ。
 首相は防衛力の内容、予算、財源の議論を一体的に進めると主張したが、安定財源のめどが立たないまま防衛力強化に傾斜していく。そもそも、専守防衛を掲げてきた安保政策が大きく転換するにもかかわらず、満足な議論はなく、国民的な理解が進んだとは思えない。
 来年の通常国会には、防衛費増額の財源を確保するための法案や、自衛隊の組織改変に必要となる法案が提出される見通しだ。徹底した審議が求められる。
 最大の歳出項目である社会保障費は、高齢化で医療費などが伸び、36兆円台後半に膨らんだ。地方交付税交付金は16兆円台半ばと、5年連続の増額となった。財源の充実が不可欠だ。どのように位置付けていくのか議論を重ねる必要がある。
 内閣の裁量で使い道を決められる予備費の計上も続く。新型コロナウイルス感染症や物価高、ウクライナ侵攻に伴う景気減速などに対応する臨時の予備費は22年度と同額の5兆円を積んだ。
 もちろん災害発生時など機動的な対応が求められることはある。だが、対処の必要性が一定想定できるものまで含めて予備費を膨らませるようでは、国会を軽視していると言わざるを得ない。財政規律を緩ませる要因となることを重く受け止める必要がある。
 歳入は、税収全体で過去最高の69兆4千億円規模を想定する。景気回復を受けて所得税や法人税の伸びを見込んだ。特別会計からの繰入金など税外収入のうち、防衛費の財源に4兆6千億円弱を振り向けたことが歳出を押し上げた。23年度の残りは防衛財源として24年度以降に支出する新たな枠組みに組み入れる。
 新たな国債35兆6千億円超を発行し、歳入の3割ほどを穴埋めする。当初比で2年連続の減額となるが、借金に頼る財政の姿は変わらない。財政の柔軟性が失われるようでは政策の幅も縮小する。無秩序に陥ってはだめだ。

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