2022.12.23 08:40
「人間見えていた」再生工場 エモやん 新著でノムさん述懐
「野村さんは常に時代に順応した野球人だった」と話す江本孟紀さん(東京・浅草の喫茶店)
江本孟紀さんの新著
野村さんとの出会いは、プロ2年目に移籍した南海ホークス(当時)でだった。監督の野村さんに「お前の球なら10勝はできる」と声を掛けられ、「だまされて、その気になった」。移籍1年目に16勝を挙げ、76年に阪神へ移籍するまで4年間バッテリーを組んだ。
「野球人としては一流だが、人間的には嫌なおやじだった」ので、多くの人は離れたが、江本さんとは「べたべたはしてないが、乾いてもいない関係」が続き、2021年のしのぶ会では野村さんの家族に求められ弔辞を述べた。著書は「『野村さんの薫陶を受けた』という偽物が多いけど、本当に野村さんのことを分かっているのは自分ぐらい」との思いで書いたという。
監督として伸び悩む選手や首になった選手を見いだした「野村再生工場」についても独自に分析。フォームの改造や新しい技術を習得させるのではなく、違った考えや視点を教えることで埋もれていた力を発揮させた。「それで自信をなくしていた選手が一変する。つまり、人間が見えていたんだろうね」
江本さんは17年、ステージ3の胃がんで「5年生存率は7%」と診断され、胃を全摘した。5年が経過したが、「人の3倍ぐらい食べていたのが、やっと2倍ぐらい食べられるようになった。寛解ですかね」。引退から41年。著書はベストセラーになった「プロ野球を10倍楽しく見る方法」などがあり、今回で82冊目。「求められる限りはやりたいね」と笑った。(浜崎達朗)