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2022.12.21 08:00

【地方議会改革】なり手確保へ議論加速を

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 地方の人口減少が進む中、議員のなり手不足に直面する市町村が増えている。行政のチェックや民意の集約など議会の機能が衰えれば、住民にもしわ寄せが及びかねない。多様な人材の確保は喫緊の課題だ。
 地方議員の兼業規制を緩和する改正地方自治法が成立した。これまでは、自治体と取引のある個人事業主は議員を兼務できなかったが、取引額が年300万円以下なら容認する。
 小規模自治体では、文房具や灯油など物品納入で自治体と取引する自営業者らも多く、兼業規制が立候補のハードルになっていた。それを超党派による議員立法で解消した。立候補しやすい環境づくりが一歩前進した。
 ただ、兼業規制の理由にもなっていた自治体と議員の癒着が起こらないとは限らない。両者が不適切な関係になりづらい取引規模として年300万円以下と設定したが、感覚的な要素も見える。運用時はしっかり透明性を確保してもらいたい。
 地方議員のなり手不足を巡っては、離島を除いて人口が全国最少だった土佐郡大川村が2017年、議会に代わる議決機関「村総会」の研究を打ち出し、問題を提起した。しかし、総務省と地方側の考えが食い違った経過もあり、長く足踏み状態が続いていた。
 前回19年の統一地方選では、無投票で当選した町村議の割合は過去最高の23・3%に上った。そうした中で今回、地方議会制度の改革が一つ具体化したことの意義は小さくあるまい。
 だが、兼業容認でどれだけ立候補する人が増えるかは未知数だ。奏功したとしても、単発の取り組みでは効果は限定的だろう。制度改革の議論を継続し、他の取り組みとともに重層的にアプローチしていくことが重要だ。
 11月には政府の地方制度調査会の小委員会が、多様な人材の確保に向けた地方議会改革についての答申案をまとめた。
 なり手不足の直接的な対策としては、サラリーマンが兼務できるよう事業者向けの「立候補休暇制度」を設けるよう要請した。法制化は事業者負担の面から見送ったが、現在、働き方改革で社員の副業を認める企業も増えている。実現の機運を高めていきたい。
 答申案は、議会が「性別や年齢構成の面で多様性を欠くことで、議会の魅力が失われている」とも指摘。夜間・休日議会の導入や、女性や若者が議会に参加できる環境づくりなどの必要性を訴えた。
 女性議員の割合は市議、町村議とも1割台にとどまる。また町村議の4分の3余りは60歳以上だ。多様な人材が集まれば議会への関心も高まり、なり手不足対策にもなろう。
 人材確保のための手段が増えたとしても、その市町村の取り組む意欲が低ければ効果は上がらない。統一地方選挙が来春に控える。地方自治の意識が高まるタイミングにあって、議会はどうあるべきかという議論を加速していきたい。

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