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2022.12.18 08:00

【防衛財源】増税は唐突で説明不足だ

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 防衛力を強化する取り組みは財源の裏付けがないまま進む。安全保障政策と財政政策の転換が打ち出されるが、規模だけが先走っても国民の安心安全にはつながらない。
 自民、公明両党が決定した2023年度与党税制改正大綱は、防衛費増額へ法人、所得、たばこの3税の増税方針を盛り込んだ。実施時期は明記せず、判断を先送りした。
 岸田文雄首相からの増税検討指示から1週間ほどしかなく、とりまとめを優先した結果だ。自民保守派や政権内からも噴き出した増税反対論を抑え込むことができず、政権基盤の弱さをさらけ出してしまった。
 首相は防衛費を23年度から5年間で総額43兆円に増やし、その財源は年末までに結論を出す考えを示していた。27年度以降に必要となる追加財源4兆円程度のうち増税で1兆円強の確保をもくろんだ。
 増税を巡り首相は、個人の所得税の負担が増加するような措置はとらないと説明していた。だが、所得税額に上乗せしている東日本大震災の復興特別所得税の半分程度を防衛費に振り向けることになる。
 その減額分を補うために復興課税期間は延長され、防衛費分も継続する。目先の所得税増税は回避したように見せても実質は増税だ。復興財源の転用との批判も根強く、復興事業への影響を危惧する声もある。
 首相は国債発行についても、未来の世代に対する責任としてとらないと主張してきた。しかし、増税反対派は勢いを増し、国債発行への圧力は強まることが想定される。追加財源と見込む剰余金など増税以外の財源も、防衛予算に振り向けることで他の経費が賄えなくなれば、国債で穴埋めせざるを得なくなる。
 自衛隊の施設整備には、これまで認めてこなかった建設国債を充てる意向だ。財政規律が緩むようでは市場の信認が揺らぎかねず、経済への影響は避けられない。
 首相は防衛力の抜本強化を打ち出し、あらゆる選択肢を排除せず現実的に対応する意向を示してきた。北大西洋条約機構(NATO)加盟国の目標を念頭に、防衛費とそれを補完する組み合わせを合わせて国内総生産(GDP)比2%に達する措置を講じるように指示している。
 具体的な水準へと踏み込んだが、防衛力整備の在り方が十分検討された結果とは思えない。これでは規模拡大のための増額ばかりが先走ることになる。首相は防衛力強化の内容、予算、財源を一体的に決定する考えを示した。だが、議論は国民不在のままで続いた印象だ。
 防衛費は経常的な経費であり、歳出改革とともに安定財源の確保が不可欠だ。厳しくなる日本の安全保障環境を受け、防衛の在り方への関心が高まる。しかし、規模を追うだけでは軍拡競争につながりかねず、かえって緊張を高めてしまう。
 首相は子ども関連予算の「倍増」を表明しているが、真剣に向き合っているか首をかしげたくなる。唐突な施策の打ち出しと説明不足が目立つようでは信頼は遠のく。

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