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2022.12.16 05:00

【日銀短観】物価高が招く先行き懸念

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 景気は一部に明るさが見られるものの、先行きは不透明感が拭えない。下支えする施策を模索しながら堅実な取り組みを重ねたい。
 日銀12月の企業短期経済観測調査(短観)は、大企業製造業の業況判断指数(DI)はプラス7で、前回9月調査からやや悪化した。悪化は4四半期連続だ。
 国内企業物価指数は11月まで21カ月連続で前年同月を上回った。ロシアのウクライナ侵攻や円安を受けた原材料やエネルギーの価格高騰は、ひと頃よりは落ち着いている。しかし依然として高い水準にあり、影響は重くのしかかる。
 一方、大企業非製造業のDIは5ポイント改善してプラス19と3四半期連続改善した。景況感は新型コロナウイルス流行前に近づいている。
 宿泊や飲食など対面型サービス業を中心に上向いた。政府の全国旅行支援や、新型コロナの水際対策緩和が追い風となった。中小企業の改善にも寄与している。
 しかし、先行きは予断を許さない。大企業製造業はわずかではあるが悪化を見込む。
 米欧では歴史的なインフレを抑制するため利上げが続く。物価上昇率の鈍化もみられるが、高い水準にとどまる。物価が安定しないまま景気が悪化するようなら、日本からの輸出が停滞しかねない。日本の経常収支は低迷が長期化しないように警戒を怠れない。
 改善傾向の大企業非製造業も、先行きは8ポイントの悪化を想定する。新型コロナ対策の緩和は一方で感染拡大の恐れもあり、また仕入れコストの増加への不安が指摘される。
 中小企業の製造業、非製造業とも先行きは悪化を見込む。ともに最近の景況感はやや改善したとみているが、その持続力には強さが乏しいと感じているようだ。
 現状は原油価格はピーク時を大きく下回っている。円相場も円高方向に振れて、輸入価格の上昇は和らいできた。しかし、企業は1年後も物価の上昇が続くとみている。それへの対応を探る必要がある。
 企業に仕入れ価格上昇などが重荷となる一方、消費者物価も上昇は10月で14カ月連続となった。家計への負担感が個人消費を縮小させると景気を冷え込ませてしまう。
 原材料価格の上昇を価格に転嫁できた企業は業績を上向かせている一方、それに踏み込めない企業もある。経営環境の厳しさは賃上げにも関わってくる。賃上げの動向は景気を支える要因となるだけに、来年の春闘への関心がいつにも増して高まっている。
 政府の総合経済対策の裏付けとなる2022年度補正予算が先ごろ成立した。物価高対応を柱とするのは当然だが、その内容や、財源の約8割を国債に頼る状況には疑問も向けられた。
 実効性のある施策でなければ財政は悪化するばかりだ。将来の負担や不安を大きくしては先行き懸念は拭えない。暮らしを守り、成長への道筋を明確にすることが大切だ。

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