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2022.12.15 18:00

【復刻1】福永ジュニア鮮やかデビュー「天才」復活へ夢膨らむ―引退表明の福永祐一騎手特集

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〈2023年2月末での引退を表明した福永祐一騎手を取り上げた高知新聞記事を復刻します。第1回は1996年3月3日付の初勝利記事です〉

 やったあ! 福永ジュニア―。JRAの第1回中京競馬が2日、愛知県豊明市の中京競馬場で12レース行われ、かつて天才騎手として一世を風靡(ふうび)した高知市出身の福永洋一さん(47)の長男、祐一騎手(19)が、初騎乗から2連勝、鮮やかなデビューを飾った。初陣2連勝は中央競馬では17年ぶり2人目の記録。昭和54年春、阪神競馬場でレース中に落馬し、現在もリハビリと闘う父に代わり、“天才福永”復活に向けて大きな一歩を踏み出した。

デビュー戦初勝利を飾り、歓喜にどよめくスタンドに笑顔でこたえる福永祐一騎手(写真はいずれも愛知県豊明市の中京競馬場)

デビュー戦初勝利を飾り、歓喜にどよめくスタンドに笑顔でこたえる福永祐一騎手(写真はいずれも愛知県豊明市の中京競馬場)


 祐一騎手は昭和51年12月、滋賀県栗東町生まれ。当時、父の洋一さんは45年からリーディングジョッキーとなる人気騎手だったが、54年3月の毎日杯で、先行馬の接触事故に巻き込まれて落馬。意識は回復したが、右半身に重いまひが残り、引退してリハビリを続けている。

 祐一騎手は周囲から父の活躍ぶりを教わって育ち、中学2年生の夏に騎手になることを決意。平成5年に競馬学校に入った。この冬に卒業後、父の親友の北橋修二調教師のきゅう舎=栗東トレーニングセンター内=に所属している。

 デビュー戦となった2日の第2レース(1000メートル、ダート)は、人気馬のマルブツブレベストに騎乗。スタート直後から2、3番手にぴたりとつけた後、4コーナーを回った直線で一気に抜け出し、最後は1馬身以上の差でゴールした。

 また第3レース(1200メートル、芝)はこれも人気のレイベストメントに騎乗。スタートダッシュで先頭に立った後、最後まで後続を寄せつけず、期待通りに2馬身半の差をつけて逃げ切った。

 デビュー2連勝は昭和54年の栗田伸一騎手以来となる。また祐一騎手はこの日、重賞(G3)を含む8レースに騎乗。新人騎手がデビュー日に騎乗した数としても、過去最多となった。2勝した後の成績は第12レースが5着、ほかは8着以下だった。


初陣勝利、偉大な父を超えた 母もスタンドも喜んだ

 先頭の馬がゴールを駆け抜けた瞬間、スタンドは爆発したような歓声に包まれた。「やったーっ!」。両手を突き上げ、叫び、わめく観衆。涙ぐみながら跳びはねる人も。「第1回中京競馬」の初日、最も観衆が沸いたのが第2、3レースの福永祐一騎手の2連勝の瞬間だ。天才騎手といわれた父、洋一さんの初騎乗と同じ日に息子が走った。そして勝った。

第1回中京競馬の初日第2レースで、デビュー初勝利のゴールに駆け込む福永祐一騎手のマルブツブレベスト

第1回中京競馬の初日第2レースで、デビュー初勝利のゴールに駆け込む福永祐一騎手のマルブツブレベスト


 同じ2世騎手の武豊さんでさえできなかった快挙。胸を熱くさせる劇的なデビューだ。

 「走らない馬でも走らせた。とにかく強かった。そう周囲の人に父のことを教えられました。いい話ばかり。とてもうれしかった」。レース前、祐一騎手はそう語った。

 洋一さんが落馬したとき、祐一騎手はまだ2歳3カ月だった。父の活躍ぶりは専ら周囲の話で知った。そして中学2年の時に騎手になる決意を固めた。

 「少しでも父に近づけるようになりたい」と臨んだデビュー戦。4コーナーまで2、3番目にぴったりつけた後、直線で残り100メートルを切ってから、ぐんぐんスピードを上げてゴールを駆け抜けた。

 「やったあという感じ。勝負は最後まで分からなくて必死でした。馬が走ってくれたおかげ。僕はつかまっていただけです。ほかの方をあおったり、邪魔したりで、とても反省しています」と祐一騎手。

 父の初騎乗は3着、初勝利は9戦目だったので、祐一騎手は早くも偉大な父を超えたことになる。

 ゴール後、北橋修二調教師とがっちり握手。そばで妹の妃呂巳さん(17)は「まさか勝つとは思わなかった。父もきっと喜ぶと思います」とにっこり。

 栗東町の自宅で、洋一さんとともにテレビで観戦した母親の有見子さん(41)は「ただ無事にゴールしてくれることを願っていました。運よく勝たせていただきとてもうれしい。一つ一つの積み重ねが大切。長い目で見守ってやってください」と話した。

 この日は、福永デビューを見ようと大勢のファンが訪れた。祐一騎手が現れる度に「祐一頑張れよっ」の声援が飛んだ。

 期待にたがわぬ鮮烈デビューは父に続く、天才ジョッキーの出現を予感させた。

【福永騎手の復刻記事はこちら】
(2)期待の星、福永2世 父の姿追い求め…初騎乗から早くも3勝
(3)福永ジュニアが父の故郷で初騎乗 天才ほうふつ、ファン胸熱く
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