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2022.12.15 08:00

【刑務官の暴行】人権意識が低いままだ

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 社会と隔絶した環境の中で公権力による暴行が行われていた。断じて許されない。人権意識の欠落を深く反省する必要がある。矯正施設に潜む体質に切り込む徹底した調査が求められる。
 名古屋刑務所で刑務官22人が受刑者3人に暴行を繰り返していた。法務省が発表した。刑事事件としての立件も検討しているようだ。
 斎藤健法相は、改善更生に向けて尽力すべき立場にある刑務官の許されない行為だとして謝罪した。全国の刑務所の状況を調査するとともに、外部有識者の検討会を設置するという。このような問題が起きた背景を明らかにして、改善策を探ることが不可欠だ。
 説明によると、刑務官は受刑者の顔をたたいたり、アルコールスプレーを顔に噴射したりしていた。けが人も出ている。いずれも個別に行われたが、暴行が複数回に及ぶ事例もあった。おおむね暴行などを認め、受刑者が指示に従わなかったなどと説明しているという。
 受刑者の更生と社会復帰を担う場所だ。監視する側の暴力が正当化されることはない。暴力で従わせようとしても反発を招くだけで、更生につながりはしない。
 名古屋刑務所では20年ほど前、放水や革手錠による受刑者への暴行死事件が起きている。関与した複数の職員が特別公務員暴行陵虐致死罪などで有罪が確定した。
 事件を受けて、受刑者の権利義務を明確化した受刑者処遇法(現在の刑事収容施設法)が施行された。刑務所改革が進められ、民間人が刑務所の運営をチェックする刑事施設視察委員会も各地に設置された。
 名古屋刑務所について視察委は今春、職員の言動や対応に対する不満が相当数あるとして、対策を講じるように求めている。刑務所側は不当な言動はなかったと回答しているが、視察委の意見後も暴行が続いていたようだ。意見を運営に反映させる意欲が乏しければ、こうした制度も機能しなくなる。
 暴行の疑いが持たれる刑務官の大半は、採用から3年未満の若手という。この間、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い集合研修が見送られ、オンライン形式で実施されていた。それがどのように影響したのかも、有識者検討会での討議テーマとなるとみられる。
 研修環境の変化は刑務官教育の質を低下させる一因かもしれない。だが、かつての暴行死事件の教訓が継承されていないことをまず重く受け止める必要がある。人権研修が取り入れられても不祥事を断ち切れなかったことは、問題の根深さを見せつけるようでもある。
 入国管理施設に対しては、収容者が適切な法的保護を受けられるように求める声が上がる。一方、葉梨康弘前法相は死刑執行のはんこを押すときだけニュースになる地味な役職などと発言して更迭された。
 法務行政の在り方に厳しい目が向けられている。改善への取り組みを真剣に進めることだ。

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