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2022.12.13 08:00

【生態系の保全】意欲的な国際目標を

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 人の営みに欠かせない自然環境にとって、人間そのものが最大の脅威になっている。その悪影響に自ら歯止めをかけられるかどうか。人類の知恵が問われている。
 国連の生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)がカナダのモントリオールで開かれている。2030年までの新たな国際目標の採択を目指す。生態系の保全、再生に向けた具体的な行動につなげなければならない。
 地球の長い歴史の中で育まれた多様な生き物や、互いにつながる生態系は食料や薬、素材、エネルギー源とさまざまな形で人類に恩恵を与えてきた。だが、乱獲や乱開発、地球温暖化などによって、生物の多様性は急速に損なわれつつある。
 人間の活動に伴って、自然状態の数十~数百倍の速さで種の絶滅が起き、現在も100万種を超える生物が絶滅の危機にあるとされる。温暖化や生息地の破壊で野生生物の分布域が変わると、新型コロナウイルスのような感染症の流行リスクも高まるという。
 こうした危機感から1992年に条約が成立し、日本を含めた196の国と地域が加盟している。ただ、条約の広がりとは裏腹に、国際社会の対応は後手に回っていると言わざるを得ない。
 2010年に名古屋市で開かれたCOP10では20年を期限とする「愛知目標」が策定された。しかし、設定された20項目の多くは達成できなかった。さらに、コロナ禍による議論の遅れで国際目標が設定できない空白期間が続き、取り組みは停滞した状態に陥っている。
 COP15は、対策の再加速に向けた後継の目標をどう策定するかが焦点となる。個別テーマでは、世界の陸と海の少なくとも30%を保全域とする案や、農薬を含む有害化学物資、プラスチックごみの削減目標などが検討されている。
 事務レベルの協議では、ほとんどの国が趣旨には賛同するものの、具体策で意見の対立がみられる。資金支援の増額を狙う発展途上国と、拠出額を抑えたい先進国の思惑が背景にあるようだ。
 立場の違いがあるにしても、国際社会全体で取り組まなければ解決できる問題ではない。各国の利害を超えた議論が求められている。
 生物の多様性と地球温暖化対策は密接に絡み合った課題で「双子の危機」とも言われる。一体的な取り組みが重要になろう。
 だが、ことし11月にエジプトで開かれた気候変動枠組み条約COP27は、産業革命前からの気温上昇を1・5度に抑える目標に向け、力強さを欠いた。各国が掲げた温室効果ガスの削減対策では1・5度目標の実現は難しいものの、追加対策や化石燃料の段階的廃止など強い方針を示せずに終わった。
 地球環境に関する国際社会の機運をいま一度、醸成する必要がある。健全な自然を次代につなげるため、生物多様性の観点からより意欲的な国際目標と具体策を打ち出したい。

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