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2022.12.07 08:00

【園児虐待】保育の質がまた揺らぐ

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 意思表示が十分にできない園児に信じがたい虐待行為が向けられていた。さらに、内部通報にも迅速に対応していなかった。安全管理がなぜうまく機能しなかったのかを解明し、再発防止と保育の質向上に努めることが不可欠だ。
 静岡県裾野市の私立「さくら保育園」で、保育士3人=退職=による虐待が行われていたとして、県警は暴行容疑で3人を逮捕した。
 調べでは、3人はそれぞれ、1歳児クラスの女児の顔を押し、また男児の足をつかんで宙づりにしたなどの疑いが持たれている。容疑をおおむね認めているという。虐待行為はたびたび目撃されており、常態化していた可能性が指摘される。
 市と園の調査によると、3人はほかにも、手足口病の症状のある園児の尻を他の園児に触らせたり、寝かしつけた園児に「ご臨終です」と発言したりした。さらに、カッターナイフを示して脅すなどの虐待行為を繰り返していたようだ。 
 3人は逮捕前の園の聞き取りに「しつけだった」と釈明している。新型コロナウイルスの影響で業務が増え、突発的にやったとも供述しているという。それで容認されることではない。
 子どもが受けた精神的なダメージを心配する声が上がる。目撃して登園をいやがるようになった園児もいたという。保護者らから怒りや不信の声が上がるのは当然だ。
 しかし、こうした事態に園側が真剣に向き合っていたとは思えない。園は6~7月に虐待を指摘する内部通報を受けている。見回り回数を増やしたりはしたようだが、園長は十分な聞き取りはせず、市や警察への通報を見送っていた。
 さらに、園は保育士による暴言や虐待行為を口外しないように求める誓約書を全ての保育士に書かせていた疑いがある。市は園長を犯人隠避容疑で刑事告発した。
 ただ、市の対応にも首をかしげざるを得ない。8月に情報を把握して虐待を確認しながら、3カ月以上にわたり問題を公表しなかった。県への連絡もすぐにはせず、保護者への説明も怠っている。迅速に対応すればそれだけ被害を減らせた可能性もあり、問題を甘く見ていたと批判されても仕方ないだろう。
 厚生労働省の実態調査で、全国の自治体で2019年度に、子どもへの暴言や乱暴な関わりなど「不適切な保育」は345件確認されている。報告されていない事案もあるとみられ、さらに多い可能性がある。
 一方、不適切な保育が疑われる事案に対応する相談窓口などの設置は不十分だ。第三者によるチェック体制を構築する必要性も言われている。組織の風通しをよくする方策を多面的に探る必要がある。
 この事件を受け、厚労省は全国の保育施設や自治体を対象に、虐待に関する情報に適切に対応できているか実態を把握する調査に乗り出す。保育の質を高めるために、財政支援の在り方を含め改善へ向けた取り組みを強めたい。

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