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2022.12.04 08:00

【県の森林環境税】目的と成果にこだわれ

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 高知県が2003年度に独自の森林環境税を導入してから、間もなく丸20年となる。5年ごとに継続の妥当性を判断している中、県は23年度以降の5年間も税を継続する方針を示している。
 森林や水源を守る同趣旨の税は37府県が導入済みだが、本県のそれは草分けであり、全国で最も森林率が高い県の立場や思いを象徴する取り組みに違いない。
 ただ、導入時と取り巻く環境は変わり、税の意義が薄れてきたのも事実だ。森林県として山にアイデンティティーを見いだす中、税をやめて山への姿勢を後退させることはなかなか難しいだろうが、惰性で続けてよいものでもない。
 続けるのなら、目的や課題を改めて明確にし、より成果が目に見えるよう取り組むことが不可欠だ。
 本県の森林環境税は、地方分権の流れで拡充された自治体の課税自主権に基づき、導入された。個人・法人の均等割県民税に一律500円を上乗せして徴収し、年間1億7千万円ほどの税収になる。
 導入当時は、国に右に倣えだった地方が独自に財源を構え、懸案に対応しようとしたこと自体に大きな意味があった。また、物理的に手入れが必要な森林も少なくなく、そのための財源も必要だった。
 さらに、山の公益的機能や間伐による手入れの必要性などが一般に周知されていたとは言い難く、税の新設を通じて、県内外の耳目を山に集めることが期待された。
 20年を経た現在、森林整備は一定進むと同時に、19年度から国税の森林環境譲与税が配分され始め、伐採などハード事業に充当できるようになった。また、森林の公益的機能も全国的に浸透してきた。その意味では、税導入時に直面していた課題はかなり解消されたといってよい。
 一方で県は、環境教育やボランティア育成などのソフト事業、シカの食害対策、木材利用の普及事業などは引き続き必要とし、税を継続してそれらに充当する考えを示す。
 継続の根拠の一つには、県民アンケートがあるのだろう。約9割が税の継続に賛成した。
 ただし、約7割は「使途を知らない」ともした。浮かび上がるのは「森林県だから」あるいは「環境問題は重要だから」という漠然とした理由で税を受け入れる県民世論ではないか。個々の事業が印象に残っていないようでは、理念とする「県民参加の森づくり」も色あせよう。
 年500円とはいえ、貴重な税金であることは言うまでもない。継続したとして、予算を消化することが目的になってはいけないし、なし崩しに流用してもいけない。目的と成果にこだわるべきだ。
 とりわけ、これから事業の柱になる環境教育などのソフト事業は、取り組みが成果につながるまでには時間がかかる。実効性を高める上で、なお工夫が必要になろう。
 税の継続議案は来年の県議会2月定例会に諮られる。より意義深い在り方を引き続き探ってもらいたい。

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