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2022.12.02 14:26

【ようこそ! 偉人館へ】中谷宇吉郎「雪の科学館」 天からの手紙を見つめる(石川県加賀市)

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 石川県加賀市にある「中谷宇吉郎 雪の科学館」。中庭(手前)では「霧の彫刻」が見られる

 世界で初めて雪の結晶を人工的に作り出した物理学者・中谷宇吉郎(1900~62年)。結晶の形が上空の気象条件に対応することを明らかにし、「雪は天から送られた手紙である」との名言を残した。出身地の石川県加賀市にある「中谷宇吉郎 雪の科学館」で、雪と氷の不思議に迫った。


 幼い頃から自然に親しみ、東京帝大(現東京大)で物理学を修めた中谷。30年に新設の北海道帝大(現北海道大)理学部へ赴任したのを機に、雪の結晶に興味を抱いた。


 館内には、中谷が撮影した形も大きさもさまざまな結晶の顕微鏡写真が並ぶ。観察結果から結晶の形を41種類に分類した中谷は、それぞれの形と気温や水蒸気量との関係を調べるため、人工雪の作製に着手した。


 中谷が結晶作りの実験を繰り返した「常時低温研究室」を再現したコーナーもある。実際の室内は雪ができる上空の気温に近い氷点下20~30度に保たれ、寒さに耐えながらの作業だったという。


 実験エリアでは、複雑な形の結晶を生み出す水の性質を分かりやすく解説。空気中の水蒸気が凍って「ダイヤモンドダスト」と呼ばれる雪のもとができる過程や、液体のまま零度以下になった「過冷却水」が一瞬で凍る現象などを観察できる。


 57~60年、中谷はグリーンランドに広がる氷床の調査隊に参加。氷から地球環境の変化を読み取ることを目指して研究に取り組んだが、病のため61歳で死去した。科学館の中庭では、中谷の次女で芸術家の芙二子さんがグリーンランドの風景をイメージして制作した「霧の彫刻」が見られる。




【科学と文化の垣根越え活躍】


 研究者としての中谷宇吉郎に多大な影響を与えたのが、東京帝大で出会った恩師の寺田寅彦だった。物理学者であり、随筆家としても知られた寺田の薫陶を受け、中谷も科学と文化の垣根を越えた活躍を見せる。


 1936年に人工雪の作製に成功した後、一時的に体調を崩した中谷は、伊東温泉(静岡県)で療養しながら随筆や絵画に没頭。38年に雪の結晶の美しさや、寺田との交流などをつづった随筆「冬の華」を出版した。


 39年には雪片の研究過程を記録した映画「雪の結晶」の製作を指導。後に映画プロダクションを立ち上げ、映像を通じて自然や科学の面白さを伝えることに力を注いだ。

(c)KYODONEWS

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