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2022.11.24 08:00

【COP27】基金設立では終わらない

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 気候変動による悪影響を救済する意義は大きい。同時に、その被害を生じさせる原因と向き合うことが重要だ。実効性のある対策と行動が求められている。
 国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)は、気候変動で発展途上国に生じた「損害と被害」に対する支援基金の設立で合意した。途上国が求めた手当てに特化した初の基金が実現する。
 気候変動への責任はほとんどない上に、防災に取り組んでもなお避けられない危機が想定される。海面上昇で国土が浸食される小島しょ国が、30年ほど前に提起した。気象災害は深刻化し、アフリカ諸国も含めて基金への要求が強まった。
 先進国が巨額の負担に反対するなど関係国の調整が難航する中、歩み寄りを後押ししたのは危機意識の高まりだろう。正式議題となったのは初めてだが会期を延長して合意にこぎ着けたことは評価される。
 ただ、被害額は2050年時点で年1兆ドル(約140兆円)に達する試算もある。運営細則は来年の会議で決める。方向性では一致してもさらなる調整が必要となるのは必至だ。
 基金の拠出元として、中国など排出量が増える新興国にも期待がかかる。気候変動の責任の受け止めが国によって異なり、簡単に応じるとは思えないが、参加へ向けた粘り強い説得が欠かせない。
 それは被害の根本原因である温室効果ガスの排出削減への行動でも同じだ。先進国は主体的な取り組みを強化することが求められ、新興国も削減を加速することが不可欠だ。しかし、化石燃料の段階的廃止など強い方針は打ち出せなかった。
 国際枠組み「パリ協定」に基づき、前回COP26では気温上昇を1・5度に抑える努力の追求で合意した。今回も目標達成へさらに努力することは盛り込んだ。だが、そのための対策強化は求めない。これでは迫力不足の印象が拭えない。
 各国が30年までの削減目標を達成しても2・5度上昇すると予測される。1・5度に抑えるには、排出のピークを25年以前に迎えて減少に転じる必要があると分析される。実現は極めて厳しい状況にある。
 再生エネルギーの導入を加速すべきだとの認識は共有した。大規模な投資の必要性にも言及した。ただ、ロシアのウクライナ侵攻などでエネルギー確保の重要性が意識される一方、現状を乗り切る方策が重視されて長期的な取り組みは先送りされがちだ。堅実な対応を重ねて新たな動きへとつなげる必要がある。
 エネルギー転換では、石炭産業の労働者の失業対策など「公正な移行」も取り上げた。社会が安定を欠くようでは転換はうまく進みはしない。混乱を招かないように丁寧な対応が欠かせない。
 会議では日本の存在感の薄さも指摘された。岸田文雄首相は国内対応に追われて欠席し、途上国支援などをアピールした欧米との違いが際立った。対策を主導する意欲を示せないと取り組み姿勢が疑われる。

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