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高知新聞PLUSの活用法

2022.11.20 08:00

【西敷地また頓挫】見通しは甘くなかったか

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 県都の注目プロジェクトが膠着(こうちゃく)状態から抜け出せない。中心街の一等地をいつまで、味気ない砂利詰めの空間にしておくのだろうか。
 高知市のオーテピア横の市有地「西敷地」を有効活用する取り組みがまた頓挫した。不透明な手続きで迷走した末、いったん計画を白紙に戻し、改めて活用案を公募したが、基準に達した提案はなかった。
 市が土地の活用策を検討し始めて10年以上たつ。内外に要因はあろうが、形がいまだ見えない結果責任は免れない。市政の実行力、推進力に疑問符を付けざるを得ない。
 西敷地について岡﨑誠也市長は、中心市街地を活性化するための高度利用にこだわり続けている。
 最初の活用案の公募は、2017年に行われた。高知大などの複合施設建設を提案する企業をいったん優先交渉権者に選んだが、選定過程を非公開にしたことから批判が噴出。19年に白紙撤回した。
 土地の重要性を考えれば選定過程の透明性が求められた。それがあれば違った展開もあっただろう。説明不足の姿勢は議会の反発も招いた。失政だったと言ってよい。
 再公募の作業は、その反省に立った形にはなった。市民アンケートを改めて行い、民間へのヒアリングを通じて参入意欲や事業性を調査。それに基づき、「広場」「子どもが遊べる場」など公益的な機能も盛り込んだ活用案の提案を求めた。選定過程の透明性も確保していた。
 しかし、提案したのは1社しかなく、内容は求める水準に届かなかった。事業性とともに複数の公益機能を求め、さらに土地使用料1400万円も課した募集条件は、ハードルが高すぎたということだ。
 市は、事前に民間にヒアリングしたとする。だが、企業の感覚的な見立てと、実際に参入を検討する場合のシビアな判断が別物になるのはよくあることだ。「資材高騰の影響もあった」とするが、流動的な経済情勢を一定、念頭に置いておくのは事業を進める上での基本でもある。
 責任を問われた岡﨑市長は「瑕疵(かし)はない」とする。確かに手続き面に瑕疵はないが、結果を見れば、公募の条件設定で見通しの甘さがあったと言われても仕方あるまい。
 かつての混乱が足かせになった面もあろう。西敷地は「もめる可能性が高い政治案件」として、民間の参入意欲に響いたのではないか。一度つまずいたが故に、市側はよりよい活用策を求め、公募条件の厳しさにつながったかもしれない。
 最初にボタンを掛け違えた事業は進めるのが難しいということだ。
 岡﨑市長は今後、条件の見直しを検討する方針を示す。今回の結果を見れば、機能の取捨選択を迫られよう。その中で、行政と市民の思いにずれが生じる可能性もある。
 いずれにせよ、目標を定め、課題に対して対策を講じ、丁寧に合意形成を図っていくのが基本だ。それがなかったがために西敷地は迷走してきた。市は、市政全般に通じる課題として捉えるべきだ。

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