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2022.11.06 05:00

【進む温暖化】対策先送りが危機強める

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 気候変動対策は急務だ。危機の緩和へ取り組みの強化が繰り返し求められてきた。データや科学的知見を真剣に受け止めて、できることを確実に進めていきたい。
 今世紀末までの気温上昇は、温暖化対策を強化しなければ2・8度になる。国連環境計画(UNEP)の報告書はこう警告する。
 猛暑や熱波など極端な高温が重大な健康被害を引き起こしている。国際研究チームは、死者がこの20年ほどで7割増え、感染症リスクが上昇したと警鐘を鳴らした。農業部門への影響も大きく、食料不足が深刻化している。豪雨や洪水の大規模な被害も多発するようになった。さらなる拡大が懸念される。
 国際枠組み「パリ協定」は今世紀末の気温上昇を産業革命前と比べ2度未満、できれば1・5度に抑えることを目指す。昨年の気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)は、1・5度に抑える努力の追求で合意している。各国の危機感の強さを示したはずだ。
 ところが、各国が確約した2030年までの温室効果ガス削減目標を達成しても2・5度上昇すると、枠組み条約事務局は予測した。1・5度の実現には、現状の対策で30年を迎えた場合の排出量より45%削減する必要がある。2度に抑えるにも30%削減が求められる。その後も減らし続けなければならない。
 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は今年春、1・5度上昇に抑えるには排出のピークを25年以前にするように訴えた。社会経済活動の転換が遅れると気候変動に追いつかないことを示している。
 しかし、再生可能エネルギーへの転換の歩みは緩慢だ。各国の現行エネルギー政策では、50年のエネルギー供給量のうち3割に届かないと見積もられる。ロシアのウクライナ侵攻はエネルギー安全保障を意識させた。低炭素技術の普及や投資の加速がこの面からも求められる。
 日本は30年度に13年度比で46%削減し、50年には実質ゼロの目標を掲げている。政府は今後10年で官民合わせて150兆円超の脱炭素投資が必要と試算する。排出量に応じた課税などでの財源確保を想定し、民間投資の後押しをもくろむ。利害が絡む問題だけに細やかな対応と理解を求める姿勢が不可欠だ。
 日本など20カ国・地域(G20)は世界の排出量の約8割を占める。削減へ主導的な役割を果たしていきたい。消費者の行動変容は削減に大きく役立つようだ。
 UNEPは、各国が30年目標を達成し、50年に実質ゼロを達成すれば1・8度の上昇に抑えられるとする。それさえ「現実味がない」と冷ややかだが、この課題を乗り越えなければ困難はさらに強まる。
 COP27がエジプトで始まる。温暖化対策の強化や、発展途上国での気候変動被害への補償などが議題となる。経済活動への影響など各国の思惑が絡む。意見の取りまとめは簡単ではないが、対策の水準を高める方策を探っていくしかない。

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