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2022.11.01 08:00

【ソウル雑踏事故】安全対策はどう進めた

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 身動きできないほどの混雑には、人命に直結する重大な危険が潜んでいることを改めて見せつけた。安全対策の検証は急務だ。原因を究明し、再発防止へ向けた取り組みを強化する必要がある。
 韓国の首都ソウルの繁華街・梨泰院(イテウォン)の狭い路地で、多数の若者らが折り重なるように転倒する事故が起きた。日本人女性2人を含む150人以上が死亡し、130人以上が負傷した。
 梨泰院は外国人も多く訪れる地区で、周辺はダンスクラブや飲食店、ブティックが集まる。人気ドラマの舞台にもなった。
 韓国では新型コロナウイルス対策で取られてきた営業時間などの規制が解除された。ハロウィーンを控えた週末の梨泰院には十数万人が集まっていたとする推計もある。
 事故が起きた坂道は幅3メートルほどで片側には飲食店などが並び、もう一方は大型ホテルの壁という。逃げ場のない路地は足の踏み場もないほど混雑していたようで、坂の下方に向かって相次いで転倒したという。多くが圧死したとみられる。混雑で救急隊の現場入りが遅れたことも、被害を拡大させたとされる。
 狭い空間に極端に人が密集して「群衆雪崩」が起きた可能性が指摘される。倒れ込みが始まると転倒の連鎖を止めることは難しく、自力で逃れることもできないとされる。2001年に兵庫県明石市の歩道橋で多数が死傷した事故との類似性を指摘する専門家もいる。
 梨泰院ではハロウィーンの時期には大勢の人出があるようだ。特に今年は、3年ぶりに新型コロナ対策の屋外でのマスクの着用義務が解除され、祝祭気分が盛り上がることが想定された。例年以上に人々が集まる可能性がある以上、その見積もりに基づいた対策が取られていたのか究明する必要がある。
 群衆雪崩の危険を回避するには、密集を作らないことが大切だという。そのためには人出を想定した上で、人の流れを整理する人員の配置が重要となる。
 自治体や警察が安全対策を十分に検討したか、またそれが機能していたか確認することが欠かせない。交通整理に当たる人員の不足など、警備の不備を指摘する意見も出ているようだ。危険性の告知なども含めた徹底した検証が求められる。
 尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は「起きてはならない悲劇と惨事」と述べ、事故収拾に最善を尽くす考えを表明した。それにはやはり原因の究明が不可欠となる。
 梨泰院の教訓はどこにでも当てはまる。日本国内でも各地でハロウィーンを楽しむ風潮が生まれている。それにとどまらず、長引く新型コロナ感染は一方で、コロナ慣れで解放感を求める気分を高める。
 年末年始にかけてのイベントへの警戒は怠れない。もちろん密集は突発的に発生する可能性もある。対応は簡単ではない。街の形状なども絡み、日常の中にある盲点を総点検するのは困難が伴うが、危険を排除する対策を重ねていくしかない。

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